2018年春、仮想通貨業界の今後を揺るがす大注目のニュースが登場しました。
それが、2月にNECから発表された、「世界最速のブロックチェーン技術の開発」です。
この記事の中で、NECは以下の開発状況を公表しています。
NECおよびNEC欧州研究所は、取引記録に参加するノード数200ノード程度の大規模接続環境下で、毎秒10万件以上の記録性能を達成する世界最速(注1)のブロックチェーン向け合意形成アルゴリズムを開発しました。
参照:https://jpn.nec.com/
2018年5月16日現時点では、2月に発表されたこのニュースはそれほど大きな話題にはなっておりません。
しかし、NECの高速システムが基盤となり、金融市場で活用の幅が広がることで、仮想通貨にも大きな変化がもたらされるでしょう。
では、ここで言う「新しいブロックチェーン」とは、旧来のブロックチェーンと比べてどのような違いがあるのでしょうか。
ここからは、今までのブロックチェーンの仕組みを紹介しつつ、NECの新システムについての特徴を解説していきます。
目次
そもそもブロックチェーンって?
ブロックチェーンは仮想通貨のシステムを支える根幹技術です。
ブロックチェーンの仕組みが世界的に評価されたことと、これだけ仮想通貨が注目される理由とは、決して切り離して考えることはできません。
そのほかにブロックチェーン技術が応用された事例については以下の記事
ブロックとは、過去の取引内容を記録しておく倉庫のようなもの。
例えば、2018年1月1日に世界中で行われた送金や売買データは、Aという倉庫に保管しておくというイメージです。
そして、チェーンとは、生成したブロックを繋いでおく鎖を意味します。過去から現在までに行われた取引記録(ブロック)は、全てチェーンによって繋がっているのです。
これがブロックチェーンの仕組みと言えます。
では、なぜわざわざ取引データをブロックごとに分けるのでしょうか? また、チェーンでブロック同士を繋ぐメリットは何なのでしょう?
ブロックチェーンが世界的な注目を浴びている
ブロックをチェーンで繋いでおくと、仮に1つのデータ内容を変更しようとすると、過去に遡って今までのデータを全て書き換える必要があります。
もし、データ内容を書き換えようとすると、チェーンの連結が崩れ、正常に取引できなくなってしまうのです。
なぜ、正常な取引ができなくなるかと言うと、仮想通貨の送金や売買を行い際は、必ず1つの取引ごとに計算処理を行い、データの整合性をチェックします。
これを「マイニング」と呼び、マイニングを手伝っている世界中の有志のことを「マイナー」と言います。
マイニングについて詳しく知りたい方は以下の記事を読んでみてください
マイナーは、より速く計算処理の答えを出した方に多くの報酬が支払われます。
ただし、万が一データ内容に書き換えが発生した場合、チェーンが崩れてしまってコンピュータの計算処理は不可能になります。
すると、マイナーは瞬時に異変に気付きます。
データを書き換えようとした人は、過去に遡って全てのデータを書き換える必要があるため、モタモタしている間にマイナーがトラブルを察知できるということです。
つまり、ブロックチェーンの仕組みがあることで、データの改ざんを防げるため、強固なセキュリティ体制を構築できます。
従来の金融取引に比べて、仮想通貨取引はより安全として世界的な注目を浴びています。
現段階のブロックチェーンが抱える課題
ブロックチェーンの仕組みは、健全な取引と安全性を確立するなど、非常に優れています。
ただし、中には3つの課題が存在しており、「いかにこの課題をクリアするか?」ということに重きを置かれてきました。
- 取引処理速度の遅さ
- 取引データ公表によるプライバシー保護
- IoTデバイスへの対応
ブロックチェーンは個々の取引に対して計算処理を行い整合性をチェックします。
そして、取引データを提供するのもユーザー、計算を行うのもユーザー。
良く言えば非中央集権でユーザー同士が自由に取引できる市場ですが、個別に対応するデメリットとして非効率性が挙げられます。
データ処理は中央部に内容を集めてドッと一括で処理するのが最も手早い方法です。
しかし、セキュリティの観点からデータが分散されてしまうので、計算処理に時間がかかってしまいます。
ちなみに、主要な仮想通貨の処理速度は各々異なり、以下のような実情となっています。
- ビットコイン(BTC):1秒辺り7~8件
- イーサリアム(ETH):1秒辺り13~15件
- リップル(XRP):1秒辺り4,000件
処理速度が速いほど、取引や決済時に素早く手続きできるということです。
取引所で仮想通貨の売買を行う時も同じです。
処理速度が遅い通貨は、買いや売り注文を出しても、それだけ反映までに長い時間がかかります。
そのため、ビットコインに限らず、仮想通貨は処理速度が重要な指標になります。
リップルは、処理速度4,000件と非常に速いです。
世界的に有名なクレジットカードブランド「VISA」が、決済などの処理速度が1秒辺り4,000~5,000件なので、リップルは取引に大変適しています。
ただし、リップルのような仮想通貨は稀です。
今後は、AIスピーカー「Amazon Echo(アマゾンエコー)」を中心に、IoT製品が次々に登場してくるでしょう。
そうした製品は常にインターネットに繋がった状態となるので、今までよりも効率的に、高速でデータ処理する技術が欠かせません。
現状の仮想通貨システムでは、通貨の送金や売買、決済のみならず、他分野のビジネスに応用していくにも問題点が多いと言えるでしょう。
IoT世界を実現するために発足したプロジェクトであるIOTAについては以下の記事を読んでみてください。
NECが開発した新型ブロックチェーン技術の特徴
ブロックチェーンの現状の問題点を解決するため、NECが開発したのが新型ブロックチェーン。
冒頭で紹介した超高速タイプのブロックチェーンシステムです。
NECの新型ブロックチェーンシステムは「イノベーション製品」というよりは、「アップデートシステム」と言えます。
全く新しい技術をゼロから生み出したわけではなく、現状の課題を解決するために生まれました。
しかし、この日本の技術が、世界の仮想通貨市場に変革をもたらす可能性が高いのです。
ここからは、NECの新技術について詳しく解説していきます。
NECが開発した新型ブロックチェーンが実現する高い処理速度
NECの新型ブロックチェーンは、とにかくデータ処理の速さが強みです。
1秒間に処理できるデータ量は、なんと10万件。
これは、仮想通貨の中では高速のリップルや、クレジットカード「VISA」の処理速度の25倍を誇ります。
処理速度が速くなることで、取引や決済時にスムーズなやり取りが実現します。
また、仮想通貨で決済を行う場合も、注文情報がすぐに処理され、「決済が完了するまで、あちらのソファでお待ちください」と店員に促されることもないのです。
ブロックチェーン上の取引情報のプライバシー保護
NECの新システムでは、仮想通貨の送金や売買を行った時の取引データの公開を限定できます。
従来のブロックチェーンでは、世界中の投資家が行った取引データは全て世の中に公開されてきました。
もちろん、取引データのみで悪意のある改ざんや不正アクセスができるわけではありませんし、マイニングを行う関係上データの公開は不可欠です。
しかし、NECは、あらかじめ指定した取引グループのデータを非公表として選択可能です。
これにより、投資家のプライバシーの保護に役立つことが期待されています。
この仕組みは現在よりも将来に大きく役立つであろうことが予見できます。
IT業界の進化はとどまることを知らず、データを悪用しようとする物の知識や技術も日を追って進歩しています。
現状のデータ全公開システムに頼りきりでは、いずれ進化したハッカーや犯罪者に対処できなくなる恐れがあります。
そのため、一部でもデータ非公表の仕組みを作り、今の内から時代の進化に対応していくことが必要なのです。
NECの新システムは、今後あらゆる物がインターネットに繋がるIoT時代を見据えた技術開発も推進しています。
IoTデバイスの弱点は処理能力が限られるということ。
パソコンのように容易にネット接続ができる反面、スペックの面ではどうしても見劣りしてしまいます。
IoTデバイスからブロックチェーン情報にアクセスしようとすると、計算処理だけで膨大な時間がかかり、端末に負荷を与えてしまうのです。
ブロックチェーンのデータは必ずしも整合性が取れているとは限らないため、「データに誤りがないか?」、「悪意のあるデータではないか?」というチェックを行うことで、計算処理が複雑化してしまいます。
そこで、NECは、IoTデバイスに導入されているTEEを活用して、新しいブロックチェーンを開発。TEEは、あらかじめハッキングやデータ改ざんのリスクを予見し、予防策を張ることでトラブルを解消する仕組みです。
TEEを活用することで、ブロックチェーンのデータ参照が簡素化し、より効率的にデータ処理が可能となります。
すると、IoTデバイスが被る負荷も減少するという仕組みです。
この技術が具体的に何に役立つのか
NECの新ブロックチェーンシステムが登場したことで、これからの金融市場は大きく流れが変わるかもしれません。
例えば、クレジットカード。大手ブランドであるVISAなどは、1秒辺りの処理速度4,000~5,000件を実現しているため、一般的な決済を行うには十分な性能を誇ります。
一方、クレジットカード開発側は、ただいま注目を集めている仮想通貨技術を導入しようとしても実現できないという問題が指摘されてきました。
その理由は、旧来のブロックチェーンが持つ「処理速度の遅さ」という欠点が挙げられます。
もし、NECのブロックチェーン技術がクレジットカードに導入されるようになると、仮想通貨決済機能付きのカードが登場しても不思議ではありません。
仮想通貨のデビットカードは存在するものの、処理速度の遅さがたたって法定通貨には全く太刀打ちできませんでした。
クレジットカードを使って、「法定通貨で買い物ができる」、「大きな買い物はビットコインで」という選択肢が増えれば、仮想通貨の需要も上昇し、より市場は成長していくはずです。
また、新しいブロックチェーンによって、超高速処理を実現した仮想通貨が生まれてくれば、「仮想通貨を使った決済」の実現性が増します。
すると、実店舗やオンラインショップの支払い環境も整備され、消費者にとっても買い物時の選択肢が増えるというメリットがあります。
実店舗やオンラインショップなどで決済できる場所まとめの記事が以下です。
NECの新技術がこれからどのように世の中に浸透していくの、今後の動きに要注目です。
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