ALISライターのいぶきち(@alis_ibukichi)です。
仮想通貨市場における王者は現状ビットコイン(Bitcoin/BTC)であることは間違いありません。
しかしながら、
- スマートコントラクトを活用した今後のブロックチェーン技術の発展
- ICOの可能性
- アルトコインの台頭
という仮想通貨の一面を考慮した時に、イーサリアム(Ethereum/ETH)が果たしている役割はビットコインに引けを取らないものであると感じています。
ビットコインが王者であるなら、イーサリアムはさしずめ、王妃と捉えることができるのではないでしょうか。
ICO時は1ETH=約40円だったイーサリアムは、様々な要因から最高価格の6分の1程度まで下落していましたが、未だにICO価格の7000倍程度を保っています。今後の価格については、正直予想がつかないのが現状です。
先日、イーサリアムの下落の要因と言われているICOプロジェクトによる売り圧はほぼ完了したとの記事が上がっていました。ポジショントークとも捉えることが出来るので、記事を鵜呑みにしてはいけませんが、価格が上昇することに繋がりやすい、好材料としての記事ではあると思います。
イーサリアムの今後の価格は「イーサリアムが求められているもの」に左右されると考えられます。
本記事では、イーサリアムに求められるものを解説したあとに、求められているものをイーサリアムでないと達成できないのかを考察していきます。
目次
イーサリアム(Ethereum/ETH)はトークンの発行とICOを求められている
イーサリアムに求められているものは、ERCトークンの発行とICO(Initial Coin Offering)です。
ERCトークンの代表的な存在であるERC-20は、Ethereum Request for Comments: Token Standard #20(イーサリアムのトークンに関する20番目の提言)の略称です。
仮想通貨の規格を統一することで、同じアドレスで仮想通貨を送金できるようにしています。
ERCトークンの詳しい解説はこちらをご覧ください。
基本的にERCトークンはMyEtherWalletなどで一括して保管することができます。
イーサリアム(Ethereum/ETH)が可能にするERCトークンの発行方法とは?
ERCトークンはWAVESと同じように誰でも発行することができます。
WAVESでのトークン発行に関する記事はこちらをご参考にしてください。
イーサリアムでトークンを発行する場合は、MyEtherWalletかMetaMaskを用意して「Token Factry」を使えば誰もが簡単に、ERC-20トークンを発行することができます。
0.1ETH(約2500円程度)もあれば、ガス代まで充分に負担できます(2018年10月現在)。
Token Factryで発行できるものは、ERC-20(いわゆる一般的なERCトークン)であり、Token FactoryでもWAVESのように誰でもトークンが発行できます。
ERCトークン大量発行による問題点とは?
ERCトークンを簡単に発行することが出来ることは決して悪いことではないと思います。
しかしながら、
- 発行したERCトークンをICOで集めた資金で、上場基準の比較的ゆるい取引所にすぐに上場できてしまう
- ホワイトペーパーではうまい話を書いていても実際に上手くいかず、トークンの価格が上がらないことからトークン自体の売り圧が増える
結果としてICOの運営自体が開発をやめるなどの理由でICOで集めたイーサリアムを売り払うことで、イーサリアムの売り圧となり、イーサリアムの価格が下落してしまいました。
だからこそ、少しでも高いうちにと大量にイーサリアムが売り出され、ビットコイン以上の大幅な価格の下落を引き起こしたとも言えると思います。
昨年、イーサリアムの価格を大きく上げる要因として盛り上がったICOブームが、皮肉にもイーサリアムの価格を大きく下げる結果となってしまっているのは間違いなさそうです。
イーサリアム(Ethereum/ETH)である必要はあるのか?
スマートコントラクトを内蔵している通貨はイーサリアムだけではありません。。
国内流通の仮装通貨で言えばネム(NEM/XEM)のモザイクやリスク(Lisk/LSK)の再度チェーンが有名です。
リップル(Ripple/XRP)もCodius(コーディアス)というスマートコントラクトの話が出ています。
WAVESももちろんスマートコントラクトですし、トークン発行の手軽さで言えば、WAVESに軍配が上がります。
果たして他の通貨と比較し、イーサリアムを使う必要性はあるのでしょうか?
イーサリアム(Ethereum/ETH)が必要である側面とは?
ERCの新しい規格はどんどん開発されています。
活用までは進んでないものがほとんどですが、技術者が増加してくれば実際に活用がなされる可能性が高いです。
このように新しい技術が内部的にも開発されているのがイーサリアムです。
技術開発が進めば進むほど、イーサリアムがその利便性で優位に立ち、利用する人が増えれば増えるほど流動性が上がり、価値が上昇することが予想されます。
イーサリアム(Ethereum/ETH)が必要でない側面とは?
個人トークンを発行する際に、ERC-20トークンを発行した人がどれくらいいるでしょうか。
実際のところWAVESトークンを発行した人がほとんどではないかと思います。手軽にトークンを発行できる点については間違いなくWAVESに軍配が上がります。
先にリンクを貼ったALISの記事を読んでください。1WAVESを使えば、ものの数百円でトークンを発行できます。
そしてコミュニティが強いネム。有志が作ったアプリケーションが実際に活用されています。
仮想通貨でよく言われるトークンエコノミーという形を実際に体現しているのは、スマートコントラクト内蔵通貨で見たときに、イーサリアムよりも他の通貨であるような気がしています。
この差は、コミュニティの力であると思っています。
残念ながらイーサリアムにはその力を発揮させるためのコミュニティの力が弱いと感じています。
なぜコミュニティが弱いと思うか?The DAO事件に遡ります。
The DAO事件とは、イーサリアムがスマートコントラクトの穴を突かれて360万ETHを流出したハッキング事件です。
現状のイーサリアムは、THE DAO事件後にハードフォークし、イーサリアムクラシック(Ethereum Classic/ETC)と分裂したもので、それぞれに対する支持者とコミュニティが成立しています。開発者であるヴィタリック・ブテリン氏はハードフォークに賛成し、現在のイーサリアム側につきました。
The DAO事件についてはこちらの記事をご確認ください。
イーサリアムとイーサリアムクラシックのコミュニティはそれぞれ成立し、それぞれが開発を進めています。
ここにイーサリアムのコミュニティの弱さが出ています。
意見の食い違いから開発サイドで分裂が生じて、まとまりがないとも言えると思います。
同じく、ハッキングで今年の1月にネムが流出しました。
ネムについても財団があり、スマートコントラクトを内蔵しています。この時ネムのコミュニティがとった行動はハードフォークではなく、コミュニティ内にいる者の独自の捜査網でした。
結果として解決には至っていませんが、非中央集権が求められる仮想通貨において、力ある者がその力を使わずにコミュニティの力でどうにかしようとする姿勢が強さであると感じます。
また、最近はnemlogというサイトが始まりました。ネムのコミュニティの強さが分かるものであると思います。
少し論点がずれますが、仮想通貨、ビットコインが普及した理由の1つに、社会一般的に見た時にオタク文化が根付いていることをご存知でしょうか。
今は仮想通貨資産を失うことの表現として使われる「GOX」。
Mt.GOXはもともと、Magic The Gathering というトレーディングカードゲームのトレードを行う会社でした。「オタク文化=コミュニティが強い」ことはコミックマーケットでよく分かると思いますが、最初の仮想通貨であるビットコインもコミュニティ文化から普及したことが分かると思います。
イーサリアムは今後ヴィタリック・ブテリン氏は離れて行くとの記事も出ていましたが、未だ一極集中的な要素を拭えていません。
どちらが正しいとは簡単に言えるものではありませんが、同じようなことを起こした仮想通貨のコミュニティとして、時期は違えど、どちらがコミュニティとしての強さがあるかは明らかであると思います。
イーサリアム(Ethereum/ETH)のスマートコントラクトについて考察する
次にイーサリアムが求められているものとして、スマートコントラクトがあげられます。スマートコントラクトとは簡単に言えば、改ざんできないブロックチェーンの仕組みを利用して、第三者を通さない契約を可能とする仕組みです。
契約書を作らなくても、あらかじめ定められた要件をクリアすれば契約が成立します。またその契約についてはブロックチェーン上に刻み込まれることから、透明性が担保されます。
ただし、決して万能という訳ではありません。一度成立した契約をキャンセルできない可能性もあると言われています。
スマートコントラクトの可能性とは?
技術屋ではない私にも、スマートコントラクトが優秀であると言うことは分かります。
トラストレス(信頼に対する第三者が必要ない)な仕組みは、契約等の合理化や透明性の実現を可能にしています。
これまで対面手動で行なっていたものを、スマートコントラクトによって信頼性が担保され、活用が進めば進むほど、社会全体に大きな変化を巻き起こすものになります。公文書の偽造問題や選挙の透明性確保にも活用ができるのでは?と言われています。
スマートコントラクトの問題点とは?
スマートコントラクトは透明すぎるからこその問題点があることは否めません。
私たち人間は曖昧な生き物です。「曖昧」この部分をスマートコントラクトで表現することは厳しいと思います。
スマートコントラクトだからと言うわけではありませんが、確実性を求めるものにとって、「表現の違い」では通らないでしょう。
ちょっとしたミスを許さないという風潮は、実は似たようなことがすでに実社会で起きています。
「今はすぐネットで拡散される監視社会で生きにくくなったよね」と実際にTwitterが炎上したり、特定されたり、人生を狂わせた人も多数います。これと同じことがスマートコントラクト上で発生する可能性は否めません。
スマートコントラクトを活用すると言うことは、「イーサリアムのブロックチェーン上に自分の(会社の)契約を全て曝け出す」と言うことと同様と捉えることが出来ます。
銀行の口座では、資金の動きを金融機関や国が把握していても、個人では把握できません。イーサリアムのブロックチェーンは透明ですから、それを誰しも把握できるということです。
便利になるということは危険と隣り合わせであることも承知する必要がありますし、そのような状況下で、スマートコントラクトを活用する必要があるかどうか?疑問に感じるところです。
イーサリアム(Ethereum/ETH)とスマートコントラクトが今後発展していくためには?
先に書いた通り、イーサリアムの今後の価格については予想は付きません。
イーサリアムが、今後昨年バブル期の価格の数倍まで高騰するか?と言われると私自身疑問に感じる部分はありますが、しかしながら、スマートコントラクト全体の今後を考えた時に未だ成長の余地はあると思っています。
スマートコントラクトを内蔵する通貨全体の価格が上がる時に、イーサリアムも上がるのではないかと思います。
私自身がイーサリアムを持っていますから、やはり上がって欲しいと思うのは本望です。
しかし、イーサリアムには次のことが必要であると考えます。
約1年くらい遅れているそうです。
予定より遅れるということは人には失望を与えます。
早急な技術開発による発展が必要であると思います。
スケーラビリティ問題(送金遅延・gas価格の高騰)も解決しないことには、実用性が乏しいと言えます。
決済としても勿論活用できますが、スマートコントラクトによる各種プラットフォー ムとしての活用がメインとなっていると思います。
そうなった時に、官民一体となって(場合によっては国をまたいで)研究開発をして いかないと、必ず認識のズレが生じます。
また、全てをイーサリアムのブロックチェーン上に載せることは危険もはらみます。
ネットワークの混雑によるGasの高騰・送金の遅延などが過去に発生していますね。
国際的な枠組みを構築し、複数のスマートコントラクト内蔵仮想通貨を使い分けるようにしていかないことには、また以前のようなGas高騰などを引き起こしかねません。
イーサリアム(Ethereum/ETH)の考察記事の終わりに
イーサリアムにのみ言えることではありませんが、今後技術が進歩した時に、仮想通貨全体として、現状の枠組み、法律の中で抑えることができないのは明らかです。
特にスマートコントラクトはその要素を大きく持っています。だからこそ、「規制がなく自由に行える」だけではなく、必要な規制を定めて、「法律に則って安全に開発できる」部分も必要ではないかと思います(日本が世界に先駆けて改正資金決済法で仮想通貨の取り扱いを明記したものと同じ)。
現状、資金流出問題ばかりで、そのあたりの部分について議論されることはありませんが、スマートコントラクトを管理する規定がどこかの国で新しく定められれば、関わる通貨の上昇は見込めるかもしれませんね。
少なくとも、仮想通貨全体がまだ黎明期を脱出しようとしている程度の位置だと思います。今、仮想通貨を持っている人全てが、歴史の目撃者であると思います。
「スマートコントラクト=イーサリアム」ではありません。あくまでイーサリアムはその一部です。
スマートコントラクトの中心はイーサリアムであっても、他と横並びに発展はしていくものと思います。
スマートコントラクト全体で見ていくと面白いかもしれませんね。
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