「BREXIT(ブレグジット)」という言葉はご存知でしょうか?
イギリス(Britain)がEUから脱退する(exit)というものから生まれた造語です。
最近ニュースを見ると、いつでもEU離脱の話をしています。
一見、私たちには関係のないようなことにも思えますが、果たして本当にそう言えるのでしょうか?
今回はイギリスがEUから離脱することは本当に正しいことなのか、私たちなりに考察していきたいと思います。
目次
イギリスのEU離脱を紹介する
ではまずは、EUからイギリスが離脱するということについて、事実関係を解説していきたいと思います。
そもそもEUはなんのために生まれたのか、なぜ離脱しようという判断に至ったのかを見てきましょう。
EUとは?
そもそもEUとは欧州連合(European Union)の略です。ニュースなどを聞いているとヨーロッパ連合とも呼ばれています。
EUは1993年にマーストリヒト条約によって誕生しました。2019年現在で考えるとわずか26年の歴史しかありません。
しかしその起源はEUとなる以前に遡ります。
諸説あるとは思いますが、始まりは1952年に誕生したECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)だと考えられます。そこからさまざまな共同体へと進化していき、それらをまとめた形として1967年にEUの前身となるEC(欧州諸共同体)が誕生しました。
そして1970年代に起きた経済危機によってECとしての機能が停滞を迎えます。
そこから脱出するための手段として「統合する」という選択肢があり、その形がいまのEUを誕生させました。
つまりEUは、各々の国家が安定した状態を保つことができるように、政治面や経済面での統合をすることを目的に誕生したといえます。
国家同士が協力関係になることでEU外の国家と対峙したときに、1つの国でなくEUとして、大きな権力を示すことが可能になるのです。
EUの歴史を表で表す
年 | 出来事 | 目的 |
---|---|---|
1952年 | ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)誕生 | 第二次世界大戦前における石炭、鉄鋼石の関税撤廃 |
1967年 | EC(欧州諸共同体)誕生 | 欧州原子力共同体、欧州石炭鉄鋼共同体、欧州経済共同体の総称 |
1993年 | EU(欧州連合)誕生 | 加盟国の政治的・経済的統合を進めていくこと |
2016年 | イギリスEU離脱 | 以下参照 |
以下の記事は、ECの初期加盟国であるフランスの紹介記事です。
ヨーロッパには移民問題がある
EUは大きな権力を持っているので、たくさんの法律を定めてます。
その中で最も特徴的なのが、「EUに加盟している国に国籍がある場合、EU内の移動は自由にしていい」というものです。
一見すると、なにも縛るものがなく、国同士の活性化につながりそうな気もします。統合することを目的にしているEUですので、当然といえば当然なのですが。
しかし、この法律はイギリスからするとあまりメリットのあるものではありません。
EU内では、国家間で経済格差があります。もともと独立していた国ですので、不思議ではありません。
皆さんご存知の通り、イギリスは世界5位の経済大国です。EU内でもドイツに次ぐ経済力を持ち合わせています。
そんなお金持ちの国であるイギリスへと、EU内からたくさんの移民が渡ってきます。自国では満足のいくサービスを受けられない人たちが毎年イギリスに流れ込んでくるのです。
もちろんイギリスは拒むことができないので、その多くの移民に対しても同様にサービスをする必要があります。
その結果、イギリス国内での予算が回らなくなっていきます。
イギリス国民の生活に支障をきたし始めてしまったのです。
イギリスで国民投票が行われる
上記のことを受けて、2016年に国民投票が行われました。
当時のイギリス首相キャメロンのもとで行われたこの国民投票は投票率72%を記録。
イギリス国民のおよそ52%が離脱に対して賛成票を投じ、僅差ではありますがイギリスはEUからの離脱を決定しました。
開票日にキャメロンは首相を辞任し、現首相であるメイ首相が就任しました。
離脱が決定しているイギリスですが、2019年1月現在、再度国民投票を行いなおすべきか、EUからの離脱をするべきなのかもめている状態です。
2019年3月29日に離脱が決定している状態ですが、EUとの合意をとるのかどうかは現在決まっていない状態です。
このまま合意なき離脱が起きるのか、はたまた離脱の延期が起きるのか、これからのイギリスの動きに注目していきたいと思います。
EU離脱の影響を考える
ここまではEU離脱について、実際に起きたことを紹介してきました。
国民投票の結果が52%だったことからもわかりますが、48%の人は離脱に対して反対をしているということになります。
このパラグラフでは、イギリス国内でのEU離脱についての意見、また、イギリスの外にはどのような影響を及ぼすのかを紹介してきます。
イギリス国民の声を考える
まずはイギリス国内の意見を賛否を分けて紹介していきましょう。
離脱派は移民問題に対して、残留派は経済問題に対して考えを持っているようです。
今回紹介する意見は以下のサイトを参考にさせていただいております。
離脱に賛成
離脱に賛成派の人は、高齢者や労働者階級層、地方住民です。
高齢者の方は、かつての移民がいなかった時代を知っています。そのため、移民が入ってきている現状のイギリスをよく思っていないのだと考えられます。
また、労働者階級層の人はその名の通り、日々働いてお金を稼いでいます。今のEUだと移民が自由に入ってくることが可能ですので、その移民と働き口を奪い合うような構図になってしまいます。だから労働者階級層も離脱には反対しています。
地方住民も同じようなことだと予想されます。イングランドはロンドンを除いてほとんど離脱派となっています。
やはり働き口を求めて移民はロンドン近郊に集まってきているでしょう。そこに住む住人からしたらストレスに感じるのかもしれません。
また、国内向けに事業を展開している中小企業や漁業関連業者も離脱に賛成しています。
やはりEUによる規制を感じている人々は一刻も早く離脱したいと考えているのでしょう。
離脱に反対
では対する反対派を見てみましょう。
反対派の多くは、若者や経営者などの中上流階級層、都市部に住んでいる住民が挙げられます。
移民という存在が生まれたときから普通であった若者世代は、離脱することに意味を見いだせていないのが現状でしょう。
また経営者などの中上流階級層は、EUから離脱することでどれだけ自分たちに経済的にマイナスがあるのかを理解しているため、離脱には反対の姿勢をとっています。
大企業や大手金融機関も同じ理由で離脱には反対してます。
ブレグジットが国外に及ぼす影響を考える
実際に離脱するかどうかを決めるのはイギリスなので、ここではイギリス国外に及ぼす影響を紹介していきます。
金融への影響
まずは日本の金融面から。おそらくユーロやポンドなどの通貨は売られてしまうことが予想されます。しかもそれが行われた後に行きつくのが安全資産である日本円でしょう。
そのため日本円がたくさん買われることになり急速な円高が進むと考えられます。
小規模な金融危機は必ず起こると予想されるので、どのような対応をするのか注目していきたいところです。
経済への影響
やはり最も経済への影響を受けるのはEUでしょう。
先ほども述べましたが、EUの中でイギリスはドイツに次ぐ経済大国です。そのイギリスがEUに対して行っているであろう資金援助は大きなものだと考えられます。
それがなくなってしまうと、EU自身の交渉力というものが弱まってしまう可能性も考えられます。
今後の世界におけるEUの地位が失われることが考えられます。
コミュニティである意味を考える
このパラグラフでは、そもそもコミュニティとはどのようなものであるべきなのかを考えていきたいと思います。
私の持論の中に、「より外部との接触回数(交換関係)が多いものほど生存確率があがる」
というものがあります。
生物が生存することについて考える
生物で考えてみるとわかりやすいのではないでしょうか。
生物が自分だけで生きていくことは基本的に不可能です。
競争が生まれる
もともとは1種類の生物しかいなかったので、かれらが成長していくことによって生まれたのが同族によるエネルギーの阻害です。似たような生物しかいないので、その中で得られるエネルギーの取り合いが発生します。競争です。
貯蓄が生まれる
これによって生まれたのが、エネルギーを保存するということです。貯蓄です。エネルギーを体内にため込むことを覚えたのです。そして安定的に長期的に生存することができるようになります。
種の多様化が生まれる
しかしこの時点では同族の生物しかいませんので、ため込んだエネルギーを交換することが全員同じ条件によって行われるようになります。当然個体差は存在しますので、大きなものが有利で小さなものは不利になっていきます。
交換を妨害している状態です。これを回避するために生まれたのが多様化するということです。
多様化することによって、同族だった種類の生物と争う必要がなくなっていきます。
そしてまた生物同士で交換が起きるのです。
この繰り返しで生物は多様化していったのです。
そして専門性の高い状態にあればあるほど、ほかの種と交換関係にあることが可能になります。
よって、生物として生存確率が高い状態にあるのは、より外部との交換関係が多いものということができました。
コミュニティが生存することも同様にいえる
生物が生存することについて考えてきました。ではこれをコミュニティの存続に置き換えて考えてみましょう。
人類は生存することを考えてコミュニティを形成しました。
それについては以下の記事でも紹介していますのでぜひ参考にしてください。
そのコミュニティは他のコミュニティと、自分たちで作ることのできないものを交換するようになります。
次は、そのコミュニティ同士で獲物の争奪が起きます。しかしいつも必ず獲得できるとは限りません。
そのために、モノをしっかりと貯蓄する必要性が出てきます。取れなかったときに対応するようになるのです。
しかし、貯蓄し続けていても、長く生存することは不可能に近いです。どうしても交換する必要が出てきます。
ただ、同じモノを貯蓄し続けていても交換することができないので、他とは違うものを自分たちで生産しなければなりません。
コミュニティとして専門性が上がり多様化が起きるのです。
そしてこの一連の流れを繰り返していくのです。
よって、コミュニティにおいてでも「より外部との接触回数(交換関係)が多いものほど生存確率があがる」ということが言えます。
イギリスのEU離脱は正しい判断ではない
コミュニティとして正しいとは言えない
ここまでの内容を踏まえて、イギリスがEUを離脱することは合理的な判断ではないといえるでしょう。
コミュニティの話で理解いただけたかと思います。外部との接触点を増やしていくことが必要なのです。
EUという枠組みから出ても、外部は多数存在しています。それらと交換関係になることはマストですが、EU内の国との接点が減ることがおわかりいただけるでしょうか?
もしEUの中にいたらあれらの国々と直接交換関係にあることが可能でした。
しかし、離脱したとたんに、あそこにいる複数の国家はEUとして接していく必要があるのです。
この時点で交換関係が減り、コミュニティとして生存する確率が著しく下がっていきます。
また、イギリスが徐々に力を弱めていくことで、イギリスと交換関係にあった国へ影響が出始めます。イギリスが世界5位の経済大国であることを考えたらなおさらです。
もし、イギリスが生存できなくなったら。
これと同じ状態が各国で起き、世界経済が崩壊します。
大げさに聞こえるかもしれませんが、イギリスがEUから離脱することによって、EUのGDPが減少するのです。
交換関係にあるものの力が弱くなっていったら?
それ以上は言わなくてもわかると思います。
だから私は、EU離脱には反対です。
EUのあり方も間違っている
しかし、EUというコミュニティのあり方にも問題があるのではないかと考えています。
EUはかなりの中央集権的組織です。EUが決めたルールには絶対的に従わなければならないですし、そのルールに対して不満を抱いている国もいるという時点で中央集権的であるといえます。
よく私たちは「分散と集約を繰り返している」という表現をしますが、今回のEU離脱は当てはまるのか考えてみました。
結論から言うと、当てはまらないと思います。
あくまでも今回の選択は「分散」ではなく「孤立」です。孤立することは何の結果も生まず、コミュニティとして衰退の一途をたどります。
イギリスのEU離脱のあるべき姿としては、EU「から離脱する」のではなくEU「の中で離脱する」ことではないでしょうか。
その動きがあることで、EUという中央集権的システムの中で分散が起きて、1つのコミュニティとしてより理想の形につながっていくのではないかと思います。
イギリスのこれからを考察する
いつどこでニュースを見ても、イギリスのEU離脱が流れています。
それほど世界が注目する行動なのです。
そしてそれが今、よくない方向に動こうとしている。イギリスだけの問題ではなく、世界が危機に直面しているといっても過言ではありません。
残り3か月を切っているEUからの離脱。
私たちがしなければいけないのは、世界崩壊に向けて準備をすることか、世界崩壊を未然に防ぐことか。
どちらでしょうか。
Coininfo的には、「離脱の形を変えてもいいんじゃないのか?」という結論にあります。
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