現在、日本政府は投資の対象である仮想通貨を有価証券として扱わないとしています。
しかし仮想通貨の投資市場規模が100兆円に迫っていることで仮想通貨が有価証券として扱われる可能性が高まっているのが現状です。
そこで、日本政府、米証券取引委員会(SEC)、それぞれの仮想通貨に対しての姿勢などを見ていく上で投資対象か、実用的な通貨かを考察していきます。
また、仮想通貨を有価証券として扱うことで、これからの仮想通貨はどう変わるのかについても触れていきます。
目次
仮想通貨が有価証券として扱われる場合についての効果を知る
仮想通貨が有価証券として扱われるようになると、以下のような変化が見られるかもしれません。
- 利益相反の規制
- 価格操作の規制
- インサイダー取引の全面禁止
- 買い煽りといったマーケティングの禁止
価格操作やインサイダー取引が規制されることで、より厳しい監視下で健全に取引が行えるようになります。
しかし、投資をする側からすれば、「情報」などで市場を予測できなくなってしまいます。
そうすると、価格操作がしづらくなり、価格変動が小さくなることで「稼ぐ」ことが難しくなります。
さらに、税金などの取り扱い上のルールが増えるなどもあり、従来の自由なスタンスの開発が行えなくなります。
このような効果をもたらす「仮想通貨の有価証券化」は海外だけでなく国内でも検討されはじめていますが、
実際に公的機関はどのような動きを見せているのでしょうか。
米国の公的な機関の見解を探る
米国証券取引委員会であるSECは、Airfox、ParagonのICOプロジェクトを告訴し、ICOトークンの発行、販売は未登録証券としています。
米国証券取引委員会は、両企業に対して「影響された投資家へ返金を行い、トークンを有価証券と登録し、SECへ周期的な報告を提出し、罰金(≒2800万円)を支払う」ようにも命じているのです。
仮想通貨は有価証券という意見が増えてきましたが、公的な機関では、登録、報告に対する認知の甘さを指摘する声も存在します。
SECとはなにかを知る
米国証券取引委員会(SEC)とは、投資家保護および公正な証券取引を目的として、1934年に設立された、独立の連邦政府機関。
SECの最大の責務は「米国資本市場・証券市場で投資家を保護すること」である。つまり、ディスクロージャーの透明性を確保し、公平な市場を実現することがSECの機能である。 「The mission of the U.S. Securities and Exchange Commission is to protect investors, maintain fair, orderly, and efficient markets, and facilitate capital formation.」(SEC HPより引用 “Why?at we do”)
SECはインサイダー取引や相場操縦など不公正取引に対する処分権限を有しており、司法に準じる権限を持った独立した強力な機関である。
一方、日本では証券取引等監視委員会が同様な機能を期待されているが、現状では金融庁の傘下機関であり、また違反者に対する権限のない機関である。 そのため、日本でもSECのような権限をもった独立機関等による投資家保護策の充実が求められている。
米証券取引委員会の概要を以下にまとめました。
- 日本の証券取引等監視委員会に相当する機関
- 規則制定権を持つ
- 民事手続、排除措置命令を出すなど行政手続を行える
- 民事制裁金を課すなど民事手続、排除措置命令も出せる
SECは仮想通貨を有価証券とみなすのかを調べる
仮想通貨を有価証券と認めるかどうかについては、日本だけでなく海外でも検討中となっています。
日本は、2014年頃から「仮想通貨を有価証券と見なさない」という姿勢を一貫していたのですが、今は金融庁のほうで有価証券の適用を検討している状況なのです。
つまり、現在では仮想通貨の評価、見方が大きく変わってきていると言えるでしょう。
SECはビットコインとイーサリアムは有価証券ではないと示すのか
ビットコイン、イーサリアム(Ethereum/ETH)、ICOは以下のような特徴を持っているため、有価証券に分類することが難しいという意見が多いです。
ビットコイン | 非中央集権型の運営がされている |
イーサリアム | ビットコインと同理由 |
ICO | デジタル資産として扱うことができるため消費財と性質が似ている |
SECが仮想通貨の扱いに関するガイダンスを正式発表した
11月5日、米国証券取引委員会(SEC)の幹部がICO発行者に対して、仮想通貨は有価証券に分類されるのかに関するガイダンスの発表を計画していることを述べました。
ウィリアム・ヒンマン氏(SECファイナンス・コーポレーション部門ディレクター)は、11月5日に米国の首都ワシントンDCで講演を行い、トークンを発行する際に開発者の参考となるガイダンスを、「簡潔な英語で」発表する予定を明かしたのです。
つまり、現在まで不透明な状況が続いていましたが、SECによる簡潔な英語で記されたガイダンスが特定のトークンは有価証券に分類されるか否かを明らかにする計画を立てていることが明るみになりました。
ウィリアム・ヒンマン氏は、「実際に何が有価証券に該当するのか」という質問に対しても、「投資に対するリターンを期待しているか」を、SECは注視していることも述べたのです。
あたらしい社会をつくる仮想通貨が求められている
以下のような利点から、仮想通貨は企業、個人が思い思いに利用する時代となりました。
ビットコイン | 国内外への送金、リアルマネーの代替となる |
イーサリアム | スマートコントラクトを導入した各種決済サービス |
その他の仮想通貨 | ビットコイン、イーサリアムに代わる新規のプロジェクト、決済サービスの開発に期待が集まっている |
契約を自動的に作成してくれるスマートコントラクトによる決済サービスや中央集権の画一的な価値に縛られないトークンエコノミーの拡大による新たな経済圏の生成に仮想通貨は不可欠な存在になっています。
そのため、現状における仮想通貨の価値は投資のフェーズから、実用的に利用できるものへとシフトしているのと言えます。
現在の傾向は、ビットコイン、イーサリアム以外の仮想通貨が開発されていくことで、益々利便性が高まっていくことを期待されています。
つまり、投資のための仮想通貨ではなくなっていく可能性を秘めているため、法定通貨の代替としての扱いが強まっていく可能性が予想されるのです。
これからは「稼ぐ」より「使う」仮想通貨に変わる
仮想通貨の市場規模は、今では100兆円規模と言われるほどの規模になりました。
それゆえに、政府は仮想通貨を有価証券として扱う動きを見せはじめています。
例としては、他の仮想通貨も同等に高いとは一概にはここでは言うことはできませんが、
有名な仮想通貨であるビットコイン、イーサリアム、リップルは有価証券として扱われる可能性が高いです。
有価証券と扱われて監視下の厳しい規制がなされると、自由に「稼ぐ」取引ができなくなった人々は、次第に投資目的の仮想通貨市場から撤退していくでしょう。
仮想通貨は変動が大きく、規制がゆるいために投資目的として注目を集めていましたが、
今後、既存の価値に左右されない新しい経済圏やコミュニティーを形成する役割を担うための仮想通貨に目を向けるべきだと思います。
具体的には、ブロックチェーンに担保された信頼性と安全性が支えるトークンエコノミーで価値をつけたトークンが通貨として扱われることにより、非中央集権的な新たな経済圏やコミュニティーが広がるでしょう。
そして、トークンエコノミーには、国籍がなく外貨のレートなどを気にせずに取引ができる非中央集権的な仮想通貨が重要になります。
これからの仮想通貨のあり方としては、「稼ぐ」よりも「使う」が必要とされ、実用化のための規制がなされていく可能性が高いと予想します。
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