今回は仮想通貨と税に関するお話をします。
税と聞くとなんだかややこしいイメージがあると思います。しかし、あやふやなままで利確を行うと損をしたり罪に問われたりしてしまいます。
そこでこういったことにならないよう、なぜ仮想通貨に課税するのか、日本と諸外国の仮想通貨に対する税や日本における現在の課税方法、政治家の動きを交えた今後の税制の動きについて説明していこうと思います!
目次
仮想通貨にかかる税金とは?
まずは、日本の仮想通貨に対する税制について、現状を把握していきましょう。
2017年12月、国税庁は、仮想通貨により得た利益に対する課税方法やその事例を公表しました。
仮想通貨は保有しているだけでは税金はかかりません。仮想通貨の売買や交換、また、仮想通貨を用いて商品の決済を行い、一定条件を満たすことで課税されます。
これらの取引により得た利益は所得税のうち、「雑所得」に分類され、収入が増えるほど税率が上がる「累進課税」となっています。
それでは、実際にどのような計算をするのか詳しく見ていきましょう。
仮想通貨にかかる税金の計算方法を解説する
まず、仮想通貨の売買などで20万円以上の利益(所得)が発生すると、その利益に対して所得税がかかります。学生や主婦など、扶養されている人は33万円以上の利益が出ると課税の対象になります。
雑所得とは下の表以外の所得のことで、税率はほかの雑所得をまとめた額に応じて決まります。
利益が4000万円を超えると税率は45%となり、住民税(10%)と合わせると、なんと最大55%にもなります。
所得区分のあらまし
利子所得 | 預貯金や公社債などの利子から生ずる所得 |
---|---|
配当所得 | 株主や出資者が法人から受け取る配当や,投資信託および特定受益証券発行信託の収益の分配から生ずる所得 |
不動産所得 | 土地,建物,不動産の貸付から生ずる所得 |
事業所得 | 農業,漁業,製造業,卸売業,小売業,サービス業など事業から生ずる所得 |
給与所得 | 勤務先から受け取る給料,賞与などから生ずる所得 |
退職所得 | 退職により勤務先から受け取る退職手当や厚生年金基金などから生ずる所得 |
山林所得 | 山林を伐採して譲渡したり,立木のままで譲渡することによって生ずる所得 |
譲渡所得 | 土地,建物,ゴルフの会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得 |
一時所得 | 1~8に該当せず,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって,労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質をううしない一時の所得 |
雑所得 | 1~9までの所得のいずれにも該当しない所得 |
所得の税率
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
196万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1800万円を超え4000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
仮想通貨にかかる課税の世界の現状を読み解く
いかがでしたか?
たくさん稼いだ場合,55%も課税されてしまう…
高い!と感じた方も多いでしょう.
では,海外の国ではどうなっているのでしょうか?
海外の国の仮想通貨に対する税制を見てみましょう!
課税がかかる国を紹介する
日本最大55.9%
日本は先ほど説明したように,取引により利益を得たとき,所得税のうち雑所得として,最大55%(うち住民税10%)がかかります.
アメリカ最大32.7%
アメリカでは仮想通貨を株式などと同様に「資産」として扱います.
仮想通貨の売買や交換,実世界におけるモノやサービスの購入をしたとき,キャピタルゲイン税としてかかります.
キャピタルゲイン税は,株式等の取引で譲渡益が発生した場合に課される税のことです.
また,仮想通貨の保有期間により税率が異なってきます.
保有期間が一年未満の場合,10%から最大38.9%までかかり,一年以上保有する場合,0%,15%,20%のいずれかがかかります.
ロシア最大13%
ロシアでも同様に仮想通貨取引により生じる所得に対し,13%の課税となります
また,一年のうち183日以上ロシア連邦に滞在する外国人についての課税も,居住者と同様に扱われます.滞在日数が183日未満の外国人など,他のケースにおいては税率が30%と高くなります.
イギリス最大20%
イギリスでは,仮想通貨で商品やサービスを購入した際に,付加価値税として,20%が課税されます.しかし,仮想通貨をポンドなどの通貨と交換した際には税金かかかりません.
フランス最大36.2%
フランスでは仮想通貨所得税として扱われ,45%が課税されていました.しかし,45%から19%まで引き下げられることが明らかになり,社会保障負担として17.2%が課税され,実質最高税率は36.2%となります.
オーストラリア1万豪ドル以下は非課税
オーストラリアは,アメリカ同様,仮想通貨を資産として扱われます.
仮想通貨で得た利益に対しキャピタルゲイン税が課されるのですが,1万豪ドル以下は非課税となっています.
課税がかからない、著しく低い国を紹介する
ベラルーシ無課税
2018年3月より仮想通貨にかかる税金が無料になりました.この法令の期間は5年間で,ICOや仮想通貨取引による所得,マイニングに関して非課税になりました.
この法令が適用されるのは,ハイテクパークという特区の中に登録された企業が発行する仮想通貨でなければなりません.
シンガポール消費税7%
仮想通貨にかかる税金は消費税の7%のみで,相続税や贈与税,キャピタルゲイン税はかかりません.
マレーシア消費税6%
シンガポール同様,相続税や贈与税はかからず,消費税の6%のみとなっています.
韓国無課税
韓国では税法の不備により仮想通貨取引に関して無課税となっています.
日本における他の金融商品と仮想通貨の税制を比較する
仮想通貨は利益を出せば出すほど税率が上がる累進課税制度を用いていましたが,一般的に金融商品として知られているFXや株式はどのような税制となっているのでしょうか.
FXや株式はいずれも他の所得と分離して税額を計算する「分離課税」となっており,税率は所得の額にかかわらず一律20.315%となっています.
また,仮想通貨は「損益通算」の対象外となっています.
「損益通算」とは不動産の貸付や,個人事業,株式の売買などで損失が生じたっばい,利益が出ている所得から差し引き,課税対象額を減額することです.
仮想通貨同士の損益や,雑所得内での損益の差し引きは可能ですが,他の金融資産との損益通算はできません.
仮想通貨に国が課税する理由を考察する
では,なぜ,仮想通貨に国は課税するのでしょうか.
それは,投資家保護のためです.
仮想通貨市場はボラティリティーが著しく高く,また,その変動の予測が大変困難となっています.
2017年には新規ユーザーが急増し,投資経験の少ない人も多く参入しました.
そういった状況の中で,現在の税制は大きな損失を被る人を少なくするための抑止力となる役割を担っているのです.
税制改定はどうなるのか考察する
現在の税制に対し,投資家や仮想通貨事業者から「55%では税金が高すぎる,分離課税にすべきだ」との声が多く挙がっています.
この主張に対し麻生大臣は,会社の給料や事業所得などで大金を稼いだ方は,最大55%ほどの税率がかかる.その一方で仮想通貨投資の利益は20%の税率で良いというのは,税の公平性に欠け,国民の理解を得られないのではないかとコメントしています.
諸外国と比較し,高税率の状態では仮想通貨,ブロックチェーン技術の育成に遅れを取ってしまうかもしれません.
しかし,ただ税率を下げるのではなく,ベラルーシのハイテクパークのような特区を制定し,そこを中心に海外企業の誘致や技術の育成をしていくなど,様々な解決策を検討し,対応していく必要があるでしょう.
仮想通貨の税制についてまとめる
いかがでしたか?
今回は仮想通貨に対する税について説明しました.
税の切り口で見ても,国によって様々な解釈があり,世界全体で仮想通貨のあり方について模索しています.
今後,各国がどのような税制を定めるのか,その動向を追うことでその国の仮想通貨に対する解釈を垣間見ることができ,世界全体の仮想通貨の流れも読み取ることができるかもしれません.
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