ビットコイン(Bitcoin/BTC)を始めとする仮想通貨の種類は2018年の時点で1000種類を超えており、世界各国でも無視できない存在になっております。
投資のための金融商品として捉える人がいれば、社会を支える新しい手段として仮想通貨の将来性を期待する声もあります。
G20参加国でも仮想通貨に対する意見が分かれており、国によって賛否は異なります。
サウジアラビアでも仮想通貨には慎重な対応を行っていて、積極的な法整備を行っている段階です。
本記事では、サウジアラビアでは具体的にどのような法整備を行っており、国内では仮想通貨の決済がどれほど進んでいるのかを紹介していきます。
目次
サウジアラビアの概要を解説する
サウジアラビアは中東に位置する国家であり、リヤドが首都です。
世界で2位の原油埋蔵量を誇る国であり、中国をメインに世界中へ輸出を行っています。
サウジアラビアは高取得国に分類されており、天然資源の開発で世界から注目を浴びています。
主要都市に人口の8割が集中しているため、海水淡水化の生産も活発です。
人口は約3000万人を誇り、国民の大半がイスラム教を信仰することが義務付けられています。
他の宗教の信仰は禁じられていて、国際人権規約を順守していないことから2016年には人権問題が非難を浴びるようになりました。
現在のサウジアラビアは宗教的な規律が厳しく、世界から否定的に見られていて、1999年より参加したG20でも指摘を受けています。
サウジアラビアでの仮想通貨の歴史を読み解く
サウジアラビアでは仮想通貨を規制する動きが頻繁に報道されています。日本円や米ドルなどの法定通貨と異なり、仮想通貨は何の前触れもなく価格が暴落するリスクが潜んでいます。
そのため、国内でも規制を行わなければいけないのが現状です。
しかしサウジアラビア国内でも仮想通貨を認める動きが少しずつ出てきています。
サウジアラビアで仮想通貨が人気になったきっかけと時期はいつか
2018年9月にサウジアラビア中央銀行のNational Commercial Bank (NCB)がリップル(Ripple/XRP)社との提携を発表しました(参照:Ripple Enters Saudi Arabia: A Partnership With NCB Is A Good Thing For XRP―DECOIN)。
BitOasisも2018年1月よりリップルを取り扱っているため、今後はサウジアラビア国内でもリップルが普及する可能性が高いです。
サウジアラビアで人気の仮想通貨とは何か
サウジアラビアでは仮想通貨に対し厳しい規制がかかっています。
2018年8月に中央銀行を通じて、個人や企業に向けて仮想通貨の保有と投資を禁止する声明を出しました。
仮想通貨は特定の管理者がいないお金でもあり、予想外のリスクを避けるための警告です。
サウジアラビアでは仮想通貨の悪用やリスクを回避するために規制を行っており、取引所が協力することでビジネスや決済の効率化が国内で進めば、仮想通貨の利便が浸透します。
現時点ではサウジアラビア中央銀行がリップル社との提携を発表しており、リップルのみがサウジアラビアで支持されている仮想通貨になります(参照:National Commercial Bank of Saudi Arabia Joins RippleNet―Ripple)。
サウジアラビアでの仮想通貨に関するニュースを読み解く
サウジアラビアでは仮想通貨保有が禁止されているため、国内で仮想通貨取引所を設立させることは困難です。そのため、サウジアラビア国内の人は、国外の取引所で仮想通貨を購入する必要があります。
中東の法定通貨に対応している仮想通貨取引所にはCRYPTO SOUKがあり、2018年3月に設立されています。同年4月よりウェブサイトが公開されて、TwitterやFacebookなどのSNSでも多くのフォロワーを得ました(参照:CRYPTO HARBOR PROJECT―CRYPTO HARBOR)。
サウジアラビア政府は2017年11月に国内の腐敗を取り締まるため、王族や官僚の拘束を行いました。拘束された王族の中にはAlwaleed bin Talal王子が含まれていて、Alwaleed王子はビットコインに対して否定的な意見を述べていました(参照:Saudi Arabia Arrests Billionaire Prince – Could Uncertainty Boost Bitcoin?―COINTELEGRAPH)。
政府が不正を行えば、人々はその国の法定通貨を信用しなくなり、自分の資産を別の形に残していきます。歴史では有事の時の資産として金が選ばれてきましたが、近年ではビットコインがその役割を果たすようになっています。
仮想通貨の普及は人々の法定通貨に対する不信の証明でもあります。
リスクヘッジの対象として見られているからこそ、仮想通貨は世界規模で普及するようになりました。
2018年1月ではサウジアラビアの電力会社のACWAパワー社はソーラーコイン採用を発表しました(参照:仮想通貨「ソーラーコイン」採用、サウジの電力会社が太陽光で―日経xTECH)。
ソーラーコインはブロックチェーン上を実装しているコインであり、発電量に比例して利益が分配され、クリーンなエネルギーの加速が目指されています。また、マイニングの消費電力も従来と比べて比較的安くなっていることから、ビットコイン以上の効率化も期待されています。
リップルとソーラーコインの導入によって、サウジアラビア国内で仮想通貨が普及する地盤は確実に整っていきます。
時期 | 出来事 |
---|---|
2017年11月 | サウジアラビア政府による王族や官僚の拘束が行われる |
2018年1月 | ACWAパワー社がソーラーコイン採用を発表 |
2018年1月 | 取引所BitOasisがリップル(Ripple/XRP)上場を発表 |
2018年3月 | 取引所のCRYPTO HARBORが設立 |
2018年4月 | 取引所CRYPTO HARBORのウェブサイトが立ち上がる |
2018年8月 | 中央銀行を通じて仮想通貨保有禁止の声明が出され、取引所BitOasisのサポートが加わる |
2018年9月 | サウジアラビア中央銀行がリップル社との提携を発表 |
各機関の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
サウジアラビアでは仮想通貨の規制が他国と比べて著しいですが、国内で評価されている一面もあります。法整備を行っている一方、政府と銀行は国内で少しずつ仮想通貨やブロックチェーンの技術を広めており、普及しつつあります。
サウジアラビア政府、銀行、企業のそれぞれが具体的にどのような施策を行っているのかを述べていきます。
サウジアラビア政府の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
2018年8月にはサウジアラビアの通貨省であるSAMA(Saudi Arabian Monetary Authority)はビットコインなどの仮想通貨を違法としています。
ビットコインが不正な貯蓄に利用されたり、マネーロンダリングなどに悪用されることを防ぐための処置です(参照:Saudi Arabian Monetary Authority Pronounces Bitcoin Illegal―Bitcoin.com)。
中東では治安の悪い地域があるため、少しでも犯罪に悪用されるリスクがあれば厳しい法整備を用意するべきというのが現状です。
サウジアラビア国内ではリスク回避のために規制を行っていますが、行政の効率化にブロックチェーンが期待されていることも事実なので、今後に期待することができます。仮想通貨は資産の避難先として注目されているので、保有を禁止させることで自国に資産を留めさせる目的もあります。
国民の資産を守り、犯罪に悪用されるリスクを防ぐために仮想通貨を禁止することが政府の見解です。
サウジアラビアの銀行の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
サウジアラビア中央銀行はリップルネットワークの参加を表明しました。
しかし、現時点では銀行も仮想通貨に対するリスクを懸念しているため、サウジアラビア国内での普及には否定的な姿勢です。
2018年8月に仮想通貨の規制を実施した理由は、投資家に対するリスクが高すぎるからです。リップルネットワークの実施がされても、国内で普及に踏み込むのはまだ時間がかかります。
サウジアラビアの企業の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
サウジアラビアでは政府と銀行が仮想通貨に対して厳しい規制を設けているので、決済の導入に踏み切れる企業は少ないです。
国内で厳重な法整備が敷かれていますが、2018年2月にはネム(NEM/XEM)の中東進出が表明されました(参照:NEM in two summits in Dubai: World Government Summit 2018 and Blockchain for Islamic Banking and Finance Medium)。
ネムは2018年1月にコインチェックの流出事件で悪いイメージが付いてしまいましたが、決してネム自体に問題があった訳ではありません。中東の進出が成功すれば、サウジアラビアでもネムが広まる可能性があります。ソーラーコインとリップルに続いて、ネムも国内で評価されることが期待されます。
保有禁止の呼び掛けに対して、中東で最大の規模を誇る仮想通貨取引所のBitOasisは規制の枠組み作成に協力を申し出て、仮想通貨の保有禁止を解除してもらおうと考えています(参照:Dubai crypto firm says working with GCC regulators to overcome Saudi ban―Business)。
BitOasisではビットコインやイーサリアム(Ethereum/ETH)、更にイーサリアムクラシック(Ethereum Classic/ETC)やリップルなども上場しており、中東の投資家にとって購入しやすい環境を整えています。
2018年7月では、サウジアラビアのリヤド・ミュニシパリティ社はIBMとの提携によって、ブロックチェーン上で政府から受けられるサービスを効率化させる動きを発表しました(参照:Riyadh Municipality selects IBM for blockchain integration―ITP.net)。
サウジアラビア政府は「サウジビジョン2030」計画を進めており、その一貫としてブロックチェーンの技術が導入される予定です。
サウジビジョン2030とは、2030年までに石油の依存脱却を掲げて、サウジアラビア国内で多様な経済を開発する計画のことです。インフラや教育の活性化も目指し、教育や医療の成長も期待されています。
サウジアラビアの企業は仮想通貨の普及のため、まずはブロックチェーンの技術を政府のサービスの効率化を図ったり、ソーラーコインのようにビジネスで導入することを実施しています。
サウジアラビアでの仮想通貨の将来性とサウジアラビアが世界に与えるインパクトとは
サウジアラビアでは仮想通貨の規制が他国に比べても厳しいため、国内で普及するには時間を要します。そのため、政府や銀行がブロックチェーン導入やリップルネットワークの参加を表明しても、サウジアラビア内では未だに多くの課題が残っています。
2017年に行われた王族及び官僚の拘束が行われたことで、サウジアラビア国内の情勢に変革の時が訪れました。
サウジアラビアでの仮想通貨の将来性を考察する
サウジアラビア国内では仮想通貨の保有は禁止されているものの、トークン自体は違法とされていません(参照:Centre may allow crypto tokens for financial transactions―DNA)。
国内での取引で暗号トークンを利用することは認めています。暗号トークンは既存のブロックチェーンを元に作られる代用紙幣のことであり、株式証券の仮想通貨版と呼べます。
トークン自体はお金の役割を果たすことはなく、ブロックチェーンのアプリケーションを利用するために必要とされていることが理由です。
技術自体は認められていることから、サウジアラビアも全てを規制している訳ではなく、リスク回避が求められています。中東で安全に保管できる環境が整えば、サウジアラビアでも仮想通貨の将来性が期待できます。
2018年2月ではRegal RA DMCCが中東地区で初めて仮想通貨取引のライセンスを獲得しており、ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨をDMCCのウォレットに保管可能になりました(参照:World’s First Deep Cold Storage for Crypto-Commodities Launched by Regal Assets in Dubai―DMCC)。
DMCCは金や宝石などを取り扱っているドバイの商業地区であり、世界経済でも大きな影響を与える場所です。今後、DMCCで仮想通貨の取引が活発となれば中東全域にも広がる可能性があり、サウジアラビアでも仮想通貨の恩恵が受けられることが期待できます(参照:Dubai Issues License to Cryptocurrency Firm―Bitcoin.com)。
サウジアラビアでの仮想通貨の発展が与える世界へのインパクトを考察する
ビジネスでは送金速度が勝敗のカギを握るため、ビットコインのような新しい通貨やブロックチェーンという改ざん不可能なデータの登場によって劇的な変化を遂げつつあります。
サウジアラビア政府もブロックチェーンの技術に期待しており、サウジビジョン2030が成功すれば世界でブロックチェーンの真価を証明することも可能です。国を変えるきっかけとなるプロジェクトが成功することで、国家の成功も世界にアピールすることにも繋がります。
リップルによって海外送金がスピーディーになり、ネムの進出がサウジアラビアにまで進めば、サウジアラビアでも仮想通貨が流通しやすくなる可能性があります。
サウジアラビアでは天然の資源が豊富に採掘されて、特に石油の資源は世界でトップレベルです。石油は物作りや燃料に使われるので、豊富に輸出するサウジアラビアは生活のライフラインを担う国と呼べます。
サウジアラビアに向けた海外送金がリップルネットワークによってより効率的になれば、中央銀行への送金速度も上がります。資源の取引に関わる送金やデータ保管もより効率的にすることも可能です。
仮想通貨のビジネスや送金がきっかけにサウジアラビアが発展すれば、仮想通貨で国を成長させたモデルとしてインパクトを与えます。
サウジアラビアの仮想通貨事情をまとめる
仮想通貨は急な暴落をするリスクが大きく、また犯罪組織の送金や賄賂などに悪用される可能性から国民を守るため、サウジアラビアでは厳しい法整備を用意しています。
しかし政府と銀行もリップルの採用を認めていることから、国内で仮想通貨が今後普及する可能性は高いです。
中東では仮想通貨が普及しつつあり、取引所のBitOasisもサウジアラビアでの流通のために尽力しています。多方面からの行動が実を結び、国内でもリスク管理ができる環境が整えば、国内の規制も緩和されます。
ソーラーコイン導入やDMCCの仮想通貨参入など、中東でも仮想通貨のビジネスが展開されつつあります。サウジアラビアを含めた中東地区でも仮想通貨が広まる日は遠くありません。
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