スウェーデンでは5年以内にキャッシュレス社会を目指しており、その一環として紙幣や硬貨の使用量を減らし、スマートフォンを利用した決済を進めています。
国民の100人に2人しか現金の決済を利用していないことに加え、スウェーデンの全銀行店鋪1400のうち、約半数が現金を扱っていません。
ちなみに2008年の銀行強盗210件が2017年はたった2件に激減しました。
そんなスウェーデンでキャッシュレスが進む理由、そして政府の対応と国民の姿勢について迫っていきます。
目次
驚異のキャッシュレス普及率!スウェーデンの実情を探る
スウェーデンはキャッシュレス社会が世界一といっていいほど進んでいます。
中央銀行によると、2015年に国内で発生した全取引の決済手段のうち現金決済は2%というデータがあります。
ちなみに、アメリカ合衆国7.7%、ユーロ圏10%の現金決済率です。
そんなスウェーデン中央銀行のスキングレー副総裁は5年以内に完全なキャッシュレス社会になる見通しを12月4日、ロンドンでの銀行関連の会議で発表しました。
また、スマートフォン決済などの新技術の台頭によって、現金使用頻度はさらに減っていくことが予想されます。
驚きのキャッシュレス社会の進化を見せるスウェーデンの政府はキャッシュレスに対してどのような施策をとるのか、
また、キャッシュレスが社会にどう浸透しているのかを見ていきましょう。
「Swish(スウィッシュ)」が代表的な決済手段である
スウェーデンでは決済時、「Swish(スウィッシュ)」という電子決済サービスが利用されています。
2012年より開始されたサービスであり、円滑な支払いとセキュリティの高さによって支持を得ています。
Swishはパーソナルナンバーと呼ばれる番号と結びついて管理されているので、金額と相手側の電話番号を入力すれば送金可能です。
一つの個人情報から他の情報も引き出せるようになっており、またQRコードがあれば誰でも気軽に決済利用できます。
スウェーデンのキャッシュレス事例を紹介する
スウェーデンでは現金が確実に消えるようになり、国民の大半が電子決済で生活しています。
国内では、現金を扱わない銀行も多く、7歳からの子どもでもデビットカードで買い物をするようです。
スウェーデンで有名なキャッシュレス事例についていくつか紹介します。
チケットの予約はインターネット決済でしかできない
スウェーデンで舞台や映画のチケットを予約するには、インターネット決済のみに限定されます。
当日券を購入することはできず、現金の利用もできません。
キャッシュは犯罪の原因になる恐れがあり、ブラックマーケットの撲滅のためにもキャッシュレスが推奨されています。
トイレでもキャッシュレス決済が利用できる
ストックホルムの百貨店に設置されている多くのトイレが無料で使用することができず、クレジットカードでの支払いが必要です。
トイレでも現金の使用はできず、あらかじめキャッシュレスの決済手段を用意することが観光客には求められます。
なぜスウェーデンはそこまでキャッシュレスを推進するのか
ではなぜスウェーデンでキャッシュレスがこれほど広まっているのでしょうか。
主な理由は以下が挙げられます。
- 脱税対策やマネーロンダリング
- 路上での現金強盗などの犯罪防止
- 現金を取り扱う際のコスト削減
現金を原因とした犯罪抑制の手段としてキャッシュレスは機能しています。
例えば、脱税対策やマネーロンダリング、さらに現金の盗難被害の削減にも役立ちます。
また、キャッシュレスによって紙幣の発行や銀行の維持などにかかるコストが大幅に削減できます。
ちなみに日本で現金を取り扱うコストは約2兆円が注ぎ込まれています。
スウェーデン政府はキャッシュレスへ積極的な姿勢を見せる
スウェーデン中央銀行ではSwishの他にもeクローナと呼ばれるデジタル通貨の発行に向けて、動き始めています。
中央銀行は、eクローナの安全性や高齢者などのIT弱者への対応を検討している段階です。
また、eクローナが民間銀行に及ぼす影響など、考える問題はたくさんあります。
キャッシュレスと同時進行のプライバシーレス社会を知る
これまで述べたようにスウェーデンは、電話番号ひとつで決済ができるサービスが多くの人に利用されたり、
国全体としてデジタル通貨の発行が検討されるなど、新しい技術に対して感度が非常に高いことで知られています。
ですが、スウェーデンは個人情報がシームレスに管理されていることでも有名です。
プレタポルテによると、スウェーデンのインターネットで個人情報を調べると電話番号や職業、さらに住んでいる不動産の価値、事実婚の有無まで知ることができることがわかっています。
このようにスウェーデンは、キャッシュレスと同じくらい、プライバシーレス社会も国の特色として挙げられます。
プライバシーレス社会では、不特定多数が個人の情報を見ることができます。
それにより個人が最小単位で評価されたり、特定の個人にアプローチがかけやすくなったりするメリットがあります。
それは特定の組織で管理される個人の枠から解放されて、各個人が価値を決めるトークンエコノミーが形成されることは可能なのでしょうか。
プライバシーレスな社会を目指すスウェーデンは時代の先をいくのか
スウェーデンは、国家が主体となってデジタル通貨を導入する初めての国になる可能性が高く、
実用的仮想通貨に関する規制や中央集権との兼ね合いが注目の国です。
また、同国では不動産取引などにもブロックチェーンが利用されるようになり、データの改ざん防止や取引成立までの時間削減にも大いに役立っています。
スウェーデンは個人情報が中央集権によって一方的に管理されるのではなく、
個人が自由に使える非中央集権社会を目指しています。
プライバシーレスな社会を実現するスウェーデンの実情です。
ですが、実はスウェーデンのプライバシーレスな社会は完全なる非中央集権とは言えないのです。
なぜなら、トークンエコノミーを形成するには、
個人が中央集権という第三者を介さずに
個人情報を自由に特定のコミュニティで利用する社会の構造が必要だからです。
プライバシーレス社会が成立するスウェーデンは、個人が選んだ特定のコミュニティではなく、既存の中央集権社会で、個人にコントロールされない個人情報が溢れている状態です。
このようなプライバシーレス社会は、個人に完全なる自由がないので、完全なトークンエコノミーに適した非中央集権社会ではないです。
プライバシーレスな社会はトークンエコノミーに必要か
キャッシュレスが進む社会で、ただキャッシュレスによる目の前の利便性を享受するのではなく
その先に社会がどう変わっていくのか、そしてそれは正しい方向なのかを見る必要があります。
スウェーデンの例でいうと、プライバシーレスな社会についてきちんとその目的と効果を見極める審美眼を磨く必要があります。
また、今後の社会は、個人が自らが選んだコミュニティやプラットフォームで、個人情報を最大限に生かすことが可能な社会が広がる可能性がおおいに考えられます。
つまり、そこでは個人の価値が中央集権的な組織や機関を介さない、自律型社会をつくることが必要です。
特定の機関に支配されずに個人が価値を発揮する非中央集権社会にこそ、明るい未来があります。
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