IT先進国エストニアが目指す電子社会とエストコイン



仮想通貨の人気が高まるにつれて、世界中の政府が仮想通貨を注視するようになりました。

マネーロンダリングへの悪用や、国家に依存しない取引への警戒心、巨額のハッキングが続出し、大きな問題となっており、仮想通貨を規制をしている国が多数あります。

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仮想通貨への各国政府の関心や警戒の度合いは、千差万別のようです。
まだまだ、危険な匂いがプンプンしている仮想通貨ですが、国家でオリジナルの仮想通貨を発行するという計画を発表した国があります。

その国とは、世界中どこに住んでもデジタル市民になれる「e-Resident構想」を2014年に実施したエストニア共和国です。

この記事でわかること
  • なぜエストニアはIT先進国になれたのか?
  • エストニアの目指す電子社会と電子国民制度とは何か?
  • エストコインとは何か?

エストニア共和国はどんな国か?


エストニア共和国は、上記の地図のように、北欧のスカンジナビア半島のフィンランドの南に位置し、北はフィンランド湾、西はバルト海に面し、東はロシアとの国境線、南はラトビアとの国境線に面してします。

2013年のエストニアのGDPは187億ドルで、一人当たりのGDPは18,852ドルで、EUの平均の半分強ですが、バルト三国の中では最も高い国です。

インターネットによる電話サービスのシステム「Skype(スカイプ)」を開発するなど、エストニアは北欧の「シリコンバレー」とも謂われるIT産業が盛んな国です。

このIT産業が盛んな国は、世界で初めて2007年(平成19年)2月26日から28日の議会選挙でインターネットを利用した電子投票を行いました。
なぜ、小国でありながら、世界で初めて議会選挙で電子投票ができるほどのITの先進国になれたのでしょう。

なぜエストニアはIT先進国になれたのか?

エストニアがIT先進国になれた背景には東西冷戦があった

第二次世界大戦後、アメリカが行ったヨーロッパへの復興援助政策に対抗して、ソビエト連邦は、「コメコン」という経済協力機構を結成し、自らが主導する東ヨーロッパを中心とした経済圏を構築しました。

1992年(平成3年)6月まで、エストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国は、このコメコンの政策で産業の割り振りを受けていました。
ラトビアが自動車産業や造船業、リトアニアが電子産業、、エストニアにはIT関連産業を割り振られ、人工知能など最先端技術を研究するサイバネティクス研究所やデータセンターなどが設置されたのです。

「米ソ冷戦」とも謂われた「東西冷戦」の終結によりコメコンが解散し、独立を回復した後も、研究所の外国人技術者達のほとんどが、エストニアに残りました。
その後、エストニアは何回か政権が交代しましたが、IT関連産業推進の政策を継続し、IT国家としての基盤を築き上げました。

エストニアではIT教育が盛んである

このように、国を挙げてIT産業の発展を推進したエストニアは、IT教育も盛んにおこなわれています。

小学生から高校生は、「プログラミング・タイガー(ProgeTiiger)」によってテクノロジーに関する基礎知識やスキルを学びます。

この教育の原動力は政府関連組織である「Tiger Leap基金」で、学校へのコンピュータの導入やネットワークインフラを整備しました。

エストニアでは行政サービスが電子化している

政府が発行する個人IDカードを使えば、行政サービスのほとんどを個人端末で受けることができます。

紙の書類による手続きが必要なのは「結婚」「離婚」「不動産の売却」だけです。

また、このIDカードは運転免許証や、ショッピングの際のポイントカードとしての機能まで持ち合わせています。

エストニアの「e-Resident構想」とは?

エストニアは、行政サービスの電子化ばかりでなく、起業家や外資の誘致を積極的に行っています。

「起業家や外資の誘致活動」を行う中で、「世界中どこに住んでもデジタル市民になれる。」という発想が生まれました。

これにより「e-Resident構想」が、立ち上がりました。

この構想の法案が、2014年(平成26年)に国会で可決され、実施されました。

電子国民の制度により、今年の4月までに、154カ国から33,438人がエストニアの電子国民になり、その中に約400名の日本人がいるようです。

エストニアが目指している電子国民制度とは?


「e-Residency」は、外国人がエストニアの電子国民になれる制度です。
http://e-resident.gov.ee/から登録をすれば、誰でも、エストニアの国内に住んでいるエストニアの国民に交付されているIDカードと同じもの交付を受けることができます。

エストニアではIDカードを使えば、「結婚」「離婚」「不動産の売却」以外の手続きができます。
そのため、国外からでもエストニアで会社設立や銀行法人口座開設ができますし、税務申告や提出書類なども電子署名でできます。

エストニアは、地理的環境により、今までに過去ソビエトや、ナチス・ドイツに支配された悲しい歴史があります。
例え、近隣の国の侵略を受け、領土が奪われ国民が世界中に散らばったとしても、オンライン上でエストニアを存続させるという意図により、「電子国民制度」という構想は芽吹いたのです。

エストニアの「e-Resident構想」のメリットは?

「e-Residency」の「デジタル国民」には、所得税や住民税の納税義務はありません。

「デジタル国民」が起業した法人は、株主に配当するまでの間は納税しなくてもいいのですが、株主に配当するようになると、法人税の納付義務が生じます。

エストニアは、「デジタル国民」を増やし、起業を促進しています。
起業した会社が儲かれば法人税がエストニア政府の懐に入ります。

「デジタル国民」が2025年の目標とする1,000万人に突破し、その中の10分の1が起業し、その中の10分の1が平均で10万ユーロを納税すれば、10億ユーロの税収です。
もし、1社で100万ユーロを納税すれば、100億ユーロの税収です。
2015年度のエストニア共和国の歳入が84億5,000万ユーロですので、大変な増収です。

エストコインってどんなコイン?

このようなIT国家として時代の最先端を走る「エストニア」ですから、最近話題の「仮想通貨」を立ち上げるという噂が絶えません。

2018年8月、エストコインが発行されると最初に報道

2017年8月、「エストニアがe-Government構想の一環として、仮想通貨エストコインの発行とICOを計画している」と報道されました。

これは、日本の大手メディア各社が現地でのエストニアでの裏付けの取材をせずに、先走った誤報だったようです。
「e-Resident」のプロジェクトマネージャのカスパー・コージュス氏の個人的な考えを政府の方針と取り違えたようです。

したがって、今のところエストコインは存在しませんし、購入も出来ません。

エストコイン発行の実現性と可能性

しかし、火のない所に煙は立たず、全く根拠のない報道ではないようです。

現在存在する仮想通貨は、ベネズエラが発効した「ペトロ」以外は、どれも「国家のお墨付きがない」「資産の裏付けがない」ものです、
「ペトロ」はICOで60億ドルを調達する計画でしたが、24億ドルしか調達できませんでした。

国家のお墨付きがあり、資産の裏付けがあっても仮想通貨のICOに失敗したペドロの先例により、エストコインの発行には慎重になっているようです。

また、エストコイン発行の構想を耳にした、欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁は、「ユーロ圏を構成するEU諸国の独自通貨導入は不可能。ユーロ圏の通貨はユーロのみ。」と断言しています。
この考えを無視して、「エストコイン」の計画を実行しても、「ペトロ」のICOが、アメリカでの使用・購入を禁止したアメリカのトランプ大統領の大統領令により成功しなかった二の舞になる可能性を否定することができません。

しかし、エストニアは、社会主義国のベネズエラとは大きく異なり、民主的でさまざまな分野で電子化が推進されているIT先進国であり、EUの加盟国です。

「ユーロに紐づく」という難問をクリアするために、e-Residencyコミュニティー内だけで使える仮想通貨にして、エストニア政府が仮想通貨の1「エストコイン」を1「ユーロ」で交換するというシステムを計画を模索しているようです。

エストコインの今後の展開はどうなる?

エストニア議会内でe-Residencyプログラムのチームメンバーと諮問委員、エストニア財務大臣、議員、エストニア中央銀行、ICOを実施している企業とそのアドバイスをしている法律事務所が参加して前向きに計画を模索しているようです。

しかし、計画段階の域は超えていませんので、いつから購入できるかは未定です。

水面下で、ICOの世界中の仮想通貨の取引所に根回しをしている可能性もありますので、いつでも購入できるように海外の取引所に口座を開設して備えるのが賢明のようです。

エストコインのまとめ

エストニアの「e-residency」の実績や取り組みの素晴らしさを説明してきました。

エストニアは小さな国ではありますが、IT導入して大きな国になろうとしています。
エストニアが目指すデジタル国家への道のりは壮大な社会実験でもあります。

エストコインがいつ発行されるのか、今後もエストニアから目が離せません。

各国の仮想通貨への動きはこちらを参考にしてください。

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