日本仮想通貨交換業協会(JVCEA)は10月24日、金融庁から資金決済法に基づく自主規制団体の認定を受け、都内で記者会見を開きました。
同協会の奥山泰全会長らが会見し、「利用者保護を最優先とし、業界の健全な発展にするよう、全力で努力していく」と発言しています。
さらに今回の金融庁からの認定を受け、10月24日から自主規制ルールが適用されるようになりました。
目次
金融庁が仮想通貨交換業協会を自主規制団体に認定する
金融庁は日本仮想通貨交換業協会を資金決済法にもとづく自主規制団体として認定しました。
金融庁は、技術変化の速い業界において、自主規制団体に利用者保護などを目的に、機動的な対応を期待したいとしています。
仮想通貨交換業協会とは?
⽇本仮想通貨交換業協会(JVCEA)は、仮想通貨交換業者の16社で構成されています(2018年10月30日現在)。
会長は株式会社マネーパートナーズ代表取締役社長の奥山泰全氏であり、ほかに役員は5人の理事がいます。
仮想通貨交換業の適正な実施を確保し、その健全な発展及び仮想通貨交換業の利用者の利益の保護に資することを目的としています。
⽇本仮想通貨交換業協会(JVCEA)会員の⼀覧はこちらからご確認ください。
自主規制団体に認定されたことによって何が変化するか?
今回、自主規制団体として認定されたことで「牽制機能を発揮できるようになる」と会長の奥山氏は発言しています。
今後自主規制を順守させるため、必要に応じて会員企業に対して立ち入り検査を行ったり、内部状況の報告を求めることができます。
また、自主規制規則に違反する業者に対しては、課徴金の形で罰金を課すことや会員資格停止といった処分も可能になりました。
仮想通貨交換業協会が自主規制ガイドラインを策定する
⽇本仮想通貨交換業協会は、金商法および金商業に関する自主規制規則などを参考に、自主規制規則・ガイドラインを策定しました。
2018年10月24日から国内取引所に適用されています。
このガイドラインは自主規制団体のホームページで公表されています。
仮想通貨交換業協会が作った自主規制ガイドラインの具体的内容とは?
上で説明したように、自主規制ガイドライン≒法令に近いものとなっています。
そのため、仮想通貨取引所はもちろん、その他の仮想通貨関連業者も無視できない存在になっています。
ここでは自主規制ガイドラインの具体的内容を抜粋してみていきます。
ガイドラインの全文はこちらからご覧ください。
匿名仮想通貨の取り扱いを禁止
取り扱う仮想通貨の選定が厳しくなりました。取り扱う仮想通貨は協会への事前届出が必要となります。
また取引記録の追跡が困難な「匿名仮想通貨」については原則禁止としています。
レバレッジ取引における証拠金倍率については、上限4倍、また会員自身が決定する水準を選択利用とします(1年間の暫定措置)。前回の金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会では、メンバーの中から「2倍にするべき」といった意見も出た。奥山会長は「研究会の議論の内容も踏まえながら検討していく」と話しました。
セキュリティの強化
各取引所がホットウォレットで仮想通貨を保管する上限を20%として設定しています。
ホットウォレットとは、インターネットに接続できる環境に保管するウォレットのことで、ハッキングのリスクがあります。
80%以上をコールドウォレットに保管し、ハッキングのリスクをなくすことを目的としています。
また、ホットウォレット上で保管する仮想通貨に応じて、現金や国債といった安全資産を用意し、流出リスクに備えることを求めることになりました。
ホットウォレットに保管した20%の仮想通貨がハッキングにあったとしても、流出分をユーザーに返済できる状態にしておくためです。
会長の奥山氏は「ホットウォレットの上限はあくまで暫定的な措置。本当に必要なことは技術面での安全管理・セキュリティ強化に業界全体で取り組むこと」と強調しています。11月には外部有識者を交えた技術委員会を立ち上げ、セキュリティ面の強化に取り組む意向です。
広告の規制
宣伝・広告ルールが厳しくなりました。
勧誘は登録した協会員の営業員のみ認められ、アフィリエイターなどが勧誘を行うことは禁止されました。また、協会員はアフィリエイターによる勧誘を助長するような過度なインセンティブを与えることも禁止されています。
さらに、広告などを目的に第三者にSNSへの発言、口コミサイトへの情報掲載を依頼することも禁止されています。
不正取引の規制
取引に関しても厳しくルールが決められました。
以下のような不適正取引を行った利用者を審査し発見した場合、その利用者に注意喚起し、改善が見られない場合は取引停止その他の措置を行います。
- 「自ら取得したことのない仮想通貨に対して、実際に利益を得たかのように喧伝すること」
- 「利用者が同一の価格で同時刻に売却と買付けを行うこと」
- 「他者と通謀して、同一の価格で売り買いを行うこと」
- 「大量の取引を発注することによって相対する注文を誘った上 で、約定する前に速やかに注文を取り消すこと」
- 「売却価格を吊り上げるために故意に買付けを行った上で売り抜けること」
- 「大量に特定の仮想通貨を保有する利用者が一斉に売却するため先に売却するほうがよいなどと根拠のない噂を故意に発信し、情報の拡散を図ること」
証拠金取引のレバレッジ倍率は、4倍以下に設定しなければいけません(1年間の暫定措置)。
レバレッジに関しては、DMM Bitcoinの社長へのインタビューで詳しく解説していますので、ご覧ください。
仮想通貨交換業協会の今後の動きとは?
仮想通貨交換業協会は、現在ライセンスを持っている登録業者16社で構成されています。今後、仮想通貨交換業協会は、会員企業を拡大していく意向です。
10月31日に、みなし業者や交換業の登録申請中・申請予定の企業を「第二種会員」として受け付け始めました。
みなし業者、申請中の企業はこちらのサイトからご確認いただけます。
2018年度中には、ウォレットを専門とする業者なども「第三種会員」として、協会への加盟を促していく予定です。
さらにICOについて、12月までに自主規制を確定し、公表することになっています。
事業者が自らICOを行うケースや、交換業者がICOで発行したトークンの販売を行うケースについてルールを整備していきます。
仮想通貨交換業協会のまとめ
会長の奥山氏は以下のように発言をしています。
「仮想通貨については早い段階で法整備がなされ、(仮想通貨分野で)日本はリーティングカントリーだと思っている。流出事件は遺憾だが、それを契機にして、ルール整備は海外に比べても早いスピードで進んでいる」
諸外国でも規制のタイミングや程度が議論されているまっただ中で、日本は明確な規制を打ち出しました。
国際機関のFATFは、2019年6月をめどに仮想通貨の国際ルールを策定することを発表しています。
自由と規制の均衡関係が、より良い実用性を生み出します。明確な目的を持ちつつ、規制を進めていっていただきたいです。
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