仮想通貨は世界的に注目を集めており、2008年に「サトシ・ナカモト」と名乗る人物が発表した論文をきっかけに、10年の時間をかけて1000を超える種類の仮想通貨が生み出されています。
仮想通貨の誕生に伴って、各国の企業もビジネスや決済の導入に踏み込んでいます。
G20でも仮想通貨が議題に上がるようになり、参加国の間でも国内でどのような姿勢を取っているのか異なっています。政府や銀行の姿勢によって、国内での仮想通貨の普及度合が変わります。
G20参加国のトルコも同様で、仮想通貨に対しては慎重な対応で向き合っています。トルコ国内では、どれくらいの規模で仮想通貨が普及しているのか、仮想通貨事情を解説していきます。
目次
トルコの概要を解説する
トルコ共和国の人口は7500万人を超えており、石炭や原油などの資源にも恵まれている国です。工業も繊維や衣類、自動車の輸出が盛んとなっており、世界中からトルコの工業製品が注目されています。
2017年第3四半期からは著しい経済成長を遂げており、1999年より参加したG20の中でも経済成長率は上位を誇ります。
一方、2018年8月に起きたトルコショックによって、トランプ政権のトルコに向けた経済制裁によって、法定通貨のトルコリラが暴落しています。
トルコからの輸入製品の税率が引き上げられてしまい、トルコ国内で不穏な空気が流れつつあります(参照:対トルコ関税率2倍に トランプ氏、通貨急落理由にー毎日新聞)。
トルコの製品が輸出困難になれば国内の経済も悪くなり、結果としてトルコを頼りにしている国々にも悪影響を及ぼします。
トルコで人気の仮想通貨とは何か
トルコショックの影響でトルコリラの価値が急落し、仮想通貨の普及率が向上していることが2018年8月に明らかとなりました(参照:How Many Consumers Own Cryptocurrency?―statista)。
statistaの調査では、トルコを含めた各国より1000人にアンケートを取った結果、トルコでは18%もの人が仮想通貨を保有している結果が出ています。
他にはルーマニアやポーランドが対象となっており、日本はアンケートに含まれていません。
トルコショックのような経済に関わる事件によって通貨の価値が下がると、特定の国に依存しない仮想通貨にお金が集まります。ビットコイン(Bitcoin/BTC)は世界的な規模で決済が増えており、トルコでもビットコインの需要が高まっています。
トルコでの仮想通貨の歴史を読み解く
2018年のトルコショックによって、トルコ国内での仮想通貨の需要が急激に高まりました。
しかし、トルコではトルコショック以前から、仮想通貨は高い人気を誇っています。2013年の時点でトルコ国内では仮想通貨取引所が設立されており、誰でも仮想通貨を買いやすくなりました。
具体的にトルコでは何がきっかけで仮想通貨が人気になったのかを紹介していきます。
トルコで仮想通貨が人気になったきっかけと時期はいつか
トルコでは仮想通貨取引所のKoinimが2013年4月に始まり、Btcturkが2013年7月に開始され、Paribuが2016年12月に設立されました。
2013年より仮想通貨取引所が運営されているので、トルコでは5年以上も仮想通貨が流通していることになります。
国内で取引所が設立されれば、その国内に住む人は仮想通貨に手を出しやすくなります。取引所の存在は仮想通貨の普及に欠かせません。
トルコでの仮想通貨に関するニュースを読み解く
トルコは仮想通貨の採用に積極的であり、国内で仮想通貨取引所が多く設立されています。
2017年11月にはトルコでのビットコインの流行に、中央銀行の関係者が大きく注目するようになりました。
トルコ中央銀行のMurat Cetinkaya氏は、金融機関と共にビットコインについて精密に調べており、技術についても肯定的な姿勢を取っています(参照:Turkey CB: “Cryptocurrencies May Contribute to Financial Stability”-Bitcoin.com)。
一方で、同時期にトルコでビットコインの保有者がギャングに誘拐される事件も起きています(参照:Türkiye’nin ilk Bitcoin gasp operasyonu-HABER TURK)
(参照:Police Bust Turkish Gang That Kidnapped Wealthy Bitcoin Holders-Bitcoin.com)。
約450万ドル(日本円にして4億5千万円)にも上るビットコインが盗まれましたが、ブロックチェーンの履歴を検索することによってギャングたちの特定に成功し、逮捕しています。
2018年1月にはトルコのサッカークラブであるHarunustasporは、Omar Faruk Kiroglu選手を獲得する契約金に0.0524ものビットコイン(日本円で約6万円)と2500リラ(日本円で約6万円)を支払いました(参照:This tiny football team just announced itself to the world by becoming the first to ever buy a player with bitcoin-BUSINESS INSIDER)。契約金に仮想通貨が利用されるのは世界初であり、Kiroglu選手も新しい取り組みに挑戦したいと語っています。
2018年8月には取引所Paribu、Btcturk、Koinimの取引量が爆発的に向上しました。
中でも取引所Btcturkは約1100万ドル(日本円で約10億円)もの取引を処理しており、トルコ国内で最大の規模を誇ります(参照:Volumes Surge on Turkey’s Crypto Exchanges as Lira Tanks-coindesk)。
法定通貨の下落はビットコインを始めとした仮想通貨の魅力を高めており、今後の取引量向上にも期待できます。
取引高は取引所で流通している金額を意味しており、取引高が多いほど積極的に取引が行われています。日本ではbitFlyerやZaif、そしてCoinCheckが高い取引高を誇ります。
さかのぼって2016年7月では、トルコ国内で軍事クーデターが起きてしまい、この事件に関連してトルコリラ暴落と国内でのビットコイン購入が進みました(参照:Turkish Residents Flock to Bitcoin During Military Coup-Bitcoin.com)。
トルコでは法定通貨の暴落が起きる度にビットコイン普及が進みます。国の情勢が不安であることが、仮想通貨普及の好条件にも繋がります。
時期 | 出来事 |
---|---|
2013年4月 | 仮想通貨取引所のKoinimが設立 |
2013年7月 | 仮想通貨取引所のBtcturkが設立 |
2016年7月 | クーデターの影響でトルコリラが急落し、仮想通貨が普及する |
2016年12月 | 仮想通貨取引所のParibuが設立 |
2017年11月 | 中央銀行関係者が仮想通貨に好意的な姿勢を表明 |
2017年11月 | ビットコインの大量保有者がギャングに誘拐される |
2018年8月 | トルコショックの影響でトルコリラが急落し、仮想通貨が普及する |
2018年8月 | Koinim、Btcturk、Paribuの取引量が急上昇 |
各機関の仮想通貨への姿勢と見解を読み解く
トルコ国内では仮想通貨に関わるニュースが頻繁に報道されており、取引所に関する話題も尽きません。トルコリラの暴落の度に仮想通貨が普及しています。
仮想通貨に対して政府・銀行・企業はどのようなイメージを持っているかを、それぞれの立場に分けて紹介していきます。
トルコ政府の仮想通貨への姿勢と見解を読み解く
トルコ政府は仮想通貨に対して厳しい規制を設けていないため、トルコは他国に比べても比較的仮想通貨が流通しやすい環境が整っています。
2018年2月にはトルコの議員より、トルコ独自の仮想通貨であるトルココイン(Turkcoin)の発行が表明されました(参照:Turkish Lawmaker Proposes National Cryptocurrency-coindesk)。
仮想通貨は金融業界の向上に役立てていることに期待しており、トルココインの発行によって国内で決済を進めやすくする目的もあります。
仮想通貨は国の経済を向上させるきっかけにもなることから、トルコ政府は仮想通貨の将来性には大きく期待しています。
トルコの銀行の仮想通貨への姿勢と見解を読み解く
Murat Cetinkaya大統領自らが仮想通貨に対して好意的な姿勢を示しているため、トルコの銀行も仮想通貨の将来性には大きく期待しています。
中央銀行に限らず、大手銀行のAkbankが仮想通貨に対して期待しており、2017年4月よりリップルネットワークへの参加を表明しました(参照:Ten More Financial Institutions Join Ripple’s Global Payments Network-Ripple)。
リップル(Ripple/XRP)は海外送金をより効率的にさせるための仮想通貨であり、既に日本やアメリカを含めた多くの国の銀行がリップルネットワークに参加しています。
トルコ銀行は仮想通貨を高く評価しており、政府と同様に仮想通貨の普及に力を入れています。
トルコの企業の仮想通貨への姿勢と見解を読み解く
トルコ国民の仮想通貨保有率の向上に伴って、ブロックチェーンの技術を導入するトルコ国内企業が増えています。
2018年8月、バフチェシェヒル大学ではトルコ国内で初めてとなるブロックチェーンセンターが誕生しました(参照:Turkey inaugurates first university blockchain center-DAILY SABAH)。
イスタンブール・ブロックチェーン&イノベーションセンターと呼ばれ、センター長のボラ・エルドマル氏はブロックチェーンの積極的な進化と情報発信を目指しており、トルコで研究と技術革新を行うための重要な拠点にすることを表明しています。
2018年9月にはボルサ・イスタンブルー証券取引所がブロックチェーンの技術を基盤にした顧客情報のデータベース開発を発表しています(参照:Borsa Istanbul builds blockchain-based database system-DAILY SABAH)。
他国でもブロックチェーンの研究を行う大学が増えており、トルコのバフチェシェヒル大学の取り組みが成功すれば国内で技術が広まります可能性が高いです。
今後、トルコの技術革新から目が離せません。
トルコでの仮想通貨の将来性とトルコが世界に与えるインパクトを考察する
金融危機でトルコリラの価値が下がっているからこそ、トルコ国内では特定の国に依存しない仮想通貨の需要が高まっています。
仮想通貨による決済が広まれば、国内で経済が衰退するリスクが下がります。トルコリラの信用が下がっても、仮想通貨で生活を支えることができれば、トルコ国内での取り組みを参考にする国も現れます。
トルコでの仮想通貨の将来性を考察する
トルコ国内では仮想通貨に対する厳重な規制が行われていないため、トルコ国内の取引所で仮想通貨を購入しやすいです。
議員もトルココインの製作を発表し、銀行や大学もブロックチェーンの技術を高く評価しています。
ブロックチェーンの教育と、データベースの開発が成功すれば、トルコ国内でもリテラシーを持つ人が増えていきます。
トルコリラに対する不信が強いからこそ、トルコ国民にとって身近になりつつある仮想通貨が法定通貨以上に期待されていて、新しい決済として普及していきます。
トルコでの仮想通貨の発展が与える世界へのインパクトを考察する
国家の危機で法廷通貨が価値を下げると、仮想通貨は資産としての信用が高まります。
トルコに限らず、治安が悪くなっているベネズエラや南アフリカなどの国でも仮想通貨の需要は高いです。特にベネズエラはトルコに先駆けて、ペドロと呼ばれる独自通貨の発行を表明しました。
トルコショックによってトルコリラの信用は下がっていますが、トルコ国内で展開されている経済や資源は優れています。
仮想通貨とブロックチェーンの技術は、トルコを救うきっかけにもなります。トルコは地理的にアジアとヨーロッパの間に位置しているため、どちらの大陸の経済にも影響を与えます。
今後トルコが仮想通貨によって安定してくれば、アジア・ヨーロッパをはじめとする世界に好影響を与えることが予測できます。
トルコの仮想通貨事情をまとめる
トルコは経済危機に陥ったことで他国との貿易が厳しくなっていますが、リラの価値が下がる代わりに仮想通貨が需要が高まっています。国内でも多数の仮想通貨取引所が設立されて、多くの人が仮想通貨に手を出しやすくなりました。
投資目的ではなく、資産の一つとしてトルコ国内で仮想通貨は普及しています。
政府と中央銀行も仮想通貨の価値を認めており、仮想通貨の将来性に期待しています。今後、仮想通貨に関連するプロジェクトがトルコ国内で成功すれば、海外からの信用を取り戻せます。
仮想通貨の普及には時間がかかりますが、トルコ国内では評価する声が非常に多いです。好意的なニュースも頻繁に報道されているので、トルコで仮想通貨に関わる今後の話題から目が離せません。
コメントを残す