政府発行の仮想通貨は非中央集権型と呼べるのか?



仮想通貨の価値を担保しているのは、実際に取引を行う投資家1人1人です。
彼ら1人1人が、ブロックチェーン技術を用いて取引全体の帳簿を管理している、といったイメージを持っていただけると分かりやすいかと思います。
この「1人1人による価値の保証」が行われているという点で、仮想通貨は「非中央集権型」の通貨と呼ばれるのです。

では、この仮想通貨が中央集権的である「政府」により発行された場合、その性質はどう変化するのでしょうか?
政府発行の仮想通貨は「非中央集権型」の通貨と言えるのか?
今記事ではこの疑問について、実際に政府が仮想通貨を発行した具体例を参考に詳しくご紹介します。

 非中央集権型とは

皆様は、仮想通貨の価値が保証される仕組みについてご存じでしょうか?

円やドルといった国が定めた法定通貨であれば、その価値は「国」、具体的には国の定めた「法律」により保証されています。
他国で自分の国の通貨が使用出来るのは、この保証がある為です。

一方、仮想通貨取引においては、「取引当事者」1人1人が価値を保証する役割を担っています。
ブロックチェーン技術を活用した膨大な取引データを取引参加者それぞれが所有することで、データの相互チェックによる取引の正確性を担保すしています。
つまり仮想通貨を取り扱う全ての人が取引全体の「帳簿」を管理している、とも言えます。

この様に、システムの支配・管理機能を特定の個人が担うのではなく、集団の構成員1人1人がシステム管理の役割を担う状態を「非中央集権型」と呼びます(これと対比関係にある考えとして、「中央集権型」というものも存在します)。
有名な仮想通貨の中ではビットコイン等が、正にこの「非中央集権型」に該当すると言えるでしょう。

では、「政府が発行した仮想通貨」は「非中央集権型」である、とは言えるのでしょうか?
本記事ではこの問題について、カンボジアやベネズエラといった国における具体例を見つつ、「なぜ政府が仮想通貨を発行する必要があったのか?」「政府発行の仮想通貨における特徴とは?」といった点に注目してご紹介します。

 政府により発行された仮想通貨:カンボジア・ベネズエラのケースをご紹介

それでは、実際に政府によって仮想通貨が検討・発行されたケースを見ていきましょう。

カンボジア:「Entapay」

2018年3月、カンボジア政府は独自の仮想通貨である「Entapay」の発行を検討しています。
このことを受け、同年2月にベネズエラ政府が官製仮想通貨である「ペトロ」の発行を開始したことも相まって、カンボジア国内からは「カンボジアにおけるブロックチェーン革命が促進される」との声も出上がっています。

政府側ウェブサイトからの情報によると、この「Entapay」とはストレージ管理機能や仮想通貨の取引、オフライン決済機能等をそろえたデジタル通貨決済システムである、とのことです。
同サイトでは、「Entapay」がVISAを主流の支払い方法として置き換えるとも主張されています。

カンボジアが仮想通貨決済サービスの導入に着手したのは昨年の4月。
日本企業のソラミツが開発したブロックチェーン技術である「いろは」を導入した決済インフラである点でも、話題を呼びました。

では、カンボジア社会に「Entapay」による決済サービスは浸透したのでしょうか?
ここで問題となったのがカンボジア政府と国立銀行との間にある、仮想通貨に対する対応の違いです。

昨年12月、仮想通貨「KHCoin」の開発者によるエアドロップ(仮想通貨の認知度・取引規模を向上させる為に行われる、仮想通貨の無料配布)が行われた際に、カンボジアの国立銀行は「仮想通貨取引は違法である」と宣言したのです。
この宣言通り、同国立銀行は銀行を始めとする金融機関が仮想通貨の購入・販売・宣伝に携わることを禁止してしまいました。

この結果、カンボジア政府は仮想通貨技術を促進する一方で、仮想通貨の取引自体には否定的である、という奇妙な状況が出来上がってしまいました。
この状況に、国内の仮想通貨所有者の間で混乱が広まっています。

ベネズエラ:「ペトロ」

ベネズエラにおける官製仮想通貨である「ペトロ」は、先ほどご紹介した通り2018年2月に発行されました。
国が発行主体である仮想通貨は、この「ペトロ」が世界で初めてです。

2017年12月3日にマドゥロ大統領により発行が表明されると、ベネズエラ政府はその豊富な石油埋蔵量を活かし、「ペトロ」の価値を石油によって担保することを考えました。
同時に、「ペトロ」の購入費用という形で最大20億ドルもの資金調達を目指しました。

この様に一見すると非常に画期的な取り組みに思えた「ペトロ」の発行ですが、仮想通貨業界からの評価・実際の取引状況共に厳しいものとなりました。

まず、そもそもの前提条件である「ペトロの価値は同国の石油埋蔵量に担保されている」という部分に疑問符が投げかけられました。
ベネズエラにおけるインフレ率は今年の3月時点で5000%を超えており、物価が安定しているとはとても言えません。
加えて、国内野党が仮想通貨の発行に反対しており政権交代が起こればペトロ自体が廃止される可能性があることや、ベネズエラの社会政権下では私有財産制が認められていない等の問題が明らかになりました。
こうしたことを考えると、ベネズエラ政府が発行した仮想通貨に対する信頼は低いと言わざるを得ないでしょう。

 政府が仮想通貨を発行する理由:既存の国の通貨との違い

そもそも、この2つの国が仮想通貨の発行を決めた理由は何だったのでしょうか?

理由の1つとして挙げられるのが、資金集めの手段とする為です。
特にベネズエラのケースでは、20億ドルもの金銭が仮想通貨への投資を経て手に入るとの試算の元、ペトロの発行に踏み切った節が見て取れます。

その他の理由としては、仮想通貨の持つ可能性への期待から発行を行ったということが挙げられます。
前述の通り、ベネズエラではインフレーションの加速によって法定通貨自体の価値が下落し続けています。
既存の法定通貨への信頼が揺らいでいることを受けたベネズエラ政府が、市場原理により安定した価値を持ち続けられる仮想通貨に注目した、という可能性は十分に考えられるということです。

現状、まだまだ既存の通貨の方が社会に深く浸透していますが、今後仮想通貨が一般的に広く使用される未来を見通しその先駆けとして、政府として仮想通貨を発行するに至った、ということでしょう。

 

 「政府が発行」に対する注意点

しかし、これら仮想通貨の発行主体が、「政府」という大きな権力を有する存在であることには注意が必要です。

カンボジアとベネズエラ双方のケースに言えることですが、どちらも国として仮想通貨に対する考え方が一本化されているとは言えない状況です。
発行主として政府が仮想通貨に関わっている以上、今後取引が禁止されたり何かしらの規制が導入される可能性は十分にあります。
取引の際には、政府の仮想通貨に対する姿勢がどう変化していくかに関して注意を払わねばいけません。

 政府発行でも非中央集権型は可能なのか?

では、最初の問いに戻りましょう。結局、これら官製発行の仮想通貨は非中央集権型と言えるのでしょうか?

非中央集権型である為に必要な条件はいくつかありますが、最も大事な条件は「権力の分散化」、すなわち特定の個人・組織の意向に左右されないシステムであるか、ということです。
この点のみを考えてみても、政府や国内多数派の意見にその在り方が左右される恐れのあるEntapayやペトロは、非中央主権型の仮想通貨とは言えないでしょう。
政府主導である以上、完全な非中央集権型の仮想通貨を発行することは困難なのかも知れません。

ちなみにこれら他にも、リップル等の未だに発行元がその大部分を所有している為に、非中央集権型とは呼べない仮想通貨も複数存在します。

 政府発行の仮想通貨と、一般の仮想通貨との違い

ちなみに、政府が発行する仮想通貨と一般的な仮想通貨との間には、何か違いはあるのでしょうか?

仕組みの上ではどちらもブロックチェーン技術を用いて、取引者全員で価値の担保を行うという点に変わりはありません。ただし、発行目的という部分に関しては、前者のケースでは財政問題を解決する為という意味合いが強いようです。

また勘違いしやすい点なのですが、これまでにご紹介したケースの様な仮想通貨においては、あくまでも政府が仮想通貨の価値を保証する「一端」を担っているということです。
従って、政府主導の仮想通貨が一般的な仮想通貨よりも安全面で絶対的に優れている、というわけではないのです。

 まとめ

いかがでしたか?
結論としては、政府が発行している時点で少なからず権力の偏りが存在する以上、官製の仮想通貨は非中央集権型とは中々言いがたい、ということでした。
ただし、今後政府による仮想通貨への介入に対する規定等が整備されていく中で、この問題が解決されていく可能性はあります。
政府主導とは言いつつもその本質は仮想通貨である以上、取引の際には通常の仮想通貨取引と同様に急激な値動きや損失リスクに注意しましょう。




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