ブロックチェーン業界で日本進出を狙う海外企業をサポートしているBaseLayer社の競さんに独占インタビューを行いました。
今回は競さんが考える仮想通貨の将来性やBaseLayer社が日本進出のサポートをしているBlockmason社のDAppsで金銭の貸し借りを管理できる「Lndr(レンダー)」というアプリケーションについて皆様にご紹介いたします!
BaseLayer社と競さんの経歴
当時は法人営業を中心として、オリックスグループとの連携や、新卒全体の育成責任者などの仕事をしていました。
2015年にビットコインに出会い、インターネットが起こした革命以上のインパクトが起きると確信し、一気にビットコインに興味が湧きました。
そこからブロックチェーンの本を何度も読み「分散型」という概念にどんどん惹かれていきました。
その後にイーサリアムを知り、スマートコントラクトという概念に触れていき、その将来性に確信を持ちました。
そしてブロックチェーンという領域を仕事にしていきたいと思うようになりました。
2016年の春には仮想通貨領域で働く方に誘ってもらったことをきっかけに仕事を辞めて、仮想通貨領域に力を入れていきました。
その中で、海外のイーサリアムコミュニティとの接点を持つ機会が多くあり、そこで日本に対して興味を持っているプロジェクトが多いことがわかりました。
しかし同時に日本に進出できない三つの要因がありました。
- 言語の壁
- 規制の壁
- ビジネスの壁
これらの要因を解消してあげることが、海外のプロジェクトのため、日本のため、ましてや自分のためになると確信しBaseLayer社の設立に至りました。
実際にBaseLayer社が担うこととしては、
海外ブロックチェーンの日本向けPR・マーケティング・コミュニティマネジメントをワンストップで提供することです。
そもそもLndrとはどのようなDAppsなのか
今までだと仮想通貨を誰にいくら送金したのかというのを記録できずに、「誰にいくら仮想通貨を貸したっけ?」という場面がよくみられました。
「Lndr」というアプリケーションでは、貸し借りを行ったアカウントごとに名前をつけることができ、
イーサリアムトークンを誰にいくら貸したのか、借りたのか、相殺したのかなどの債権債務の記録を可能にしました。
- 債権債務を記録するイーサリアムベースの最初のアプリであること
- 従来の割り勘アプリにはなかった「相殺」という機能を持っていること
「相殺」という言葉を説明しますので以下の例を考えてみてください。
AさんがBさんに1,000円を貸したとします。
またその後BさんがAさんに500円を貸したとします。さらにAさんがBさん300円貸しました。
今までのトランザクションの処理では以下の三つのプロセスが必要になっていきます。
- AさんからBさんへ1,000円
- 借りた1,000円のうちの500円をBさんからAさんへ
- さらにAさんからBさんへ300円
しかし「Lndr」アプリの中ではある程度溜まってきたトランザクションをまとめて「相殺」することが可能です。
上の例でいうと最終的にはAさんがBさんに800円貸している状態になっています。
これを可能にすることで、毎回の取引の処理が必要ではなくなるので、エコな取引を行うことができるようになります。
お金はそもそも貸す人と借りる人がいる状況が「カネ」の語源だという説もあるのです。
その貸し借りをを見える化したものがお金という存在ですので、債権債務の記録はそのお金が動いていく中で必要な機能となるわけです。
その機能に着目したのがBlockmasonであり、「Lndr」というアプリケーションの誕生の経緯になっています。
債権債務の取引の記録という点で話すと「Lndr」は企業間の支払いに応用できると考えています。
企業間での取引においては支払いを来月に行うというようにタイムラグが存在する中で情報記録をしていかないといけません。
今はまだ実験的な取り組みですが、将来的なBtoBの利用を見越してBtoCの貸し借り管理アプリとして機能させています。
もっと技術ベースの話をしますと「Lndr」はクレジットプロトコロルという技術を使っています。
クレジットプロトコルというものは貸し借りを記録する箱のようなものをイメージしていただいて構いません。
その箱をイーサリアムのブロックチェーンに載せることができます。
この技術自体も未発達なものですので、企業のニーズなどにも合わせて変化していく技術だと考えています。
「Lndr」はクレジットプロトコロルの発達を推進し、企業向けのアプリケーションとして進化していくと思います。
また「Lndr」は2018年8月にv1.2のバージョンアップを遂げ、PayPalとの提携を発表しました。
これにより、PayPalが抱える2億4400万人のユーザーへのリーチ及び、
200ヶ国以上での利用が可能になり、 益々普及に拍車がかかっています。
競さんが考えるブロックチェーンの将来性とは
そもそも「Lndr」はイーサリアムのプラットフォームを使用されていますが、
なぜイーサリアムというプラットフォームを利用されているですか?
一番の理由は開発環境の充実さですが、あらゆる点でイーサリアムはずば抜けていると思います。
例えばフルノード数はビットコインが一万なのに対しイーサリアムは二万となっています。
フルノード数の数はどれくらい分散化されているのかを示しますのでセキュリティの高さに関係してきます。
イーサリアムの開発環境の話をしますとトリュフという開発アプリはも60万弱ダウンロードされていて、他のプラットフォームに比べると圧倒的な数値となっています。
それだけイーサリアムの利用者がいることでイーサリアムの試行錯誤の経験値を有しています。
その試行錯誤の中で「The DAO事件」なども含めて、
どのように問題を解決するのかという議論がなされて解決策が提案されているのがイーサリアムだと思っています。
イーオスも注目はしていますが、進化のスピードや周りの巻き込みという点でいうとイーサリアムはその他のプラットフォームを圧倒していると思います。
そもそもプラットフォームの選び方はプロダクトに依存すると思っていますので、場合によってはイーサリアムよりもイーオスの方が適している場合もあります。
わかりやすい例を使うなら、AppleのOSを使うのかGoogleのOSを使うのかはアプリケーションによって変わってくるということと同様なものと考えています。
開発に必要な人材を採用できる環境はすでに整っています。
しかしブロックチェーンの発展を促せる人間はまだまだ少ないと思っています。
- 経済理論がわかる
- 暗号学がわかる
- ブロックチェーンを開発・実装できる
これらの要素を持つ人材は重宝されますし、こういう人たちの登場はブロックチェーンの発展スピードを高めていくと思います。
未来の話をすると、ブロックチェーンの開発環境はある程度整っていますので、ブロックチェーンが発展して実生活に落とし込まれていくことは時間の問題です。
3年から5年もすれば自分たちが普段使うアプリケーションの中にブロックチェーンが組み込まれていることが不思議に思わない状況が出来上がっているのではないかと思います。
コンセンサスアルゴリズムもPOSに変わっていきますし、ERC721のようにトークン一つ一つを識別できる規格が充実していくようになると思います。
ERC721が充実していくと株の領域などでも応用され、同じ種類の株でも一つ一つ別のものと自動で区分することが可能になります。
今年半年着実に開発が進めば、DEXやERC721トークンの企画やスケーラビリティの問題の解消などがかなり進んでいきます。
さらに匿名化技術がもっと充実すると公共の見せたくない情報も存在を証明したまま内容を伏せて記録できるようになります。
来年ブロックチェーン技術は実用的な部分に落とし込まれ始めていきますが、そのための準備が2018年の後半で整うと思います。
今回のインタビューを終えて編集部より
今回はLndrの話をインタビューさせていただいて「DAppsはまだまだ未成熟であること」と「イーサリアムプラットフォームの偉大さ」を再認識しました。
ブロックチェーンの技術が発展していくにしたがって、そのユースケースであるDAppsも発展していきます。
ブロックチェーンの発展がどのように進んでいくのか2018年の残りの後半も注目していきましょう。
またイーサリアムプラットフォームの圧倒的な開発環境が整っていることがプラットフォームのユーザーを増やし、
そのユーザーがイーサリアム上での試行錯誤の回数を増やし、イーサリアムを発展させていくという仕組みは頭一つ抜きでているイーサリアムだからこそできることであると感じました。
イーサリアム開発環境が優れていることは間違いありませんが、イーサリアムが一番優れているプラットフォームであるということではありません。
お忙しい中お時間をいただきましてありがとうございました。