非中央集権的な金融システムを作るために仮想通貨が2008年に提唱され、その根幹技術となるブロックチェーンは幅広い分野で利用されようとしています。
代表的な応用例としては投票システムへの利用というものがあり,
ブロックチェーンを利用することで時間の短縮やより公正な投票をすることができると言われています。
つくば市でのブロックチェーンを用いた投票の実証実験など、投票システムへの実用例とそれらが抱える課題を解説していきます。
目次
ブロックチェーンを用いた投票システム事例
ブロックチェーンは様々な場所で利用されています。
- 茨城県つくば市の投票実験
- NASDAQとエストニア政府による電子投票
- クリプトバレーのスイス・ツーク市の市民投票
それぞれの内容を簡単に解説していきます。
茨城県つくば市の投票実験
茨城県つくば市では2018年8月20日にブロックチェーンを用いたネット投票が日本で初めて行われました。
このネット投票はつくば市が実施する「Society 5.0 社会実装トライアル支援事業」のプロジェクトを選ぶために利用されました。
ネット投票はつくば市に設置された専用の投票用パソコンに接続されたカードリーダーにマイナンバーカードをセットし、認証画面で電子署名ようのパスワードを入力して本人確認を行い、投票画面でプロジェクトを選択します。
ネット投票の最大の課題は情報の信頼性である。本人確認と改ざん防止の仕組みがカギとなる。
と五十嵐つくば市長も述べています。
マイナンバーカードとブロックチェーンを組み合わせることでネット投票の課題解決に近づいています。
つくば市の投票システムの今後
つくば市の投票実験を踏まえてこの実験での改善点は二つです。
- ネット投票は市役所でしかできなかった
- マイナンバーカードの普及率が低い
つくば市のネット投票では市役所に置かれた専用のパソコンでしか行えなかったため、ネット投票といいながらも市役所に足を運ぶ必要がありました。
今後はアプリを通じてスマホやパソコンから手軽に行えるようにする仕組みも作っていこうとしています。
また本人確認のためにマイナンバーカードを利用していましたが、マイナンバーカードの普及率はいまだに10%台であり、ブロックチェーンの部分以外の課題が多く見られています。
NASDAQとエストニア政府による電子投票
2016年のはじめにエストニア政府とNASDAQは株主総会における議決権の行使をブロックチェーンに置き換えるべく実証実験をすすめてきました。
株主は今や国内だけではないので、国境を越えた議決権の行使を行えるソリューションが必要になっています。
また現在の電子投票システムでは代理人を通じて議決権を行使する場合の管理が難しいことが挙げられていますが、ブロックチェーンを用いることでその透明性から株主総会の投票プロセスを改善することが可能になります。
クリプトバレーのスイス・ツーク市の市民投票
2018年7月にクリプトバレーと呼ばれるスイスのツーク市で初めて行われたブロックチェーンによる市民投票が行われました。
2017年11月に導入された市のデジタルIDシステムを活用し、ブロックチェーンによる投票システムを試験する計画を発表しました。
このシステムにより市民は自分のモバイル機器から投票が可能となりました。
この市民投票に強制力はなくオンライン投票にアクセスできる240人の市民のうち、72人が参加する小規模なものとなりました。
ブロックチェーンのネット投票が抱える課題
ブロックチェーンを用いたネット投票は「透明性が高く、改ざんができない」このようなイメージを持っていると思います。
果たして現状のブロックチェーンを用いた投票システムのセキュリティは果たして完璧なのでしょうか。
この投票システムには以下の二つの課題が存在しています。
- 投票デバイスのハッキング
- 投票買収が行われる
それぞれの課題を詳しく見てきましょう。
投票デバイスのハッキング
仮にブロックチェーンがハッカーからの攻撃を防ぐことができたとしても、ネット投票を行うスマホなどのデバイスがハッキングされる可能性があります。
その結果投票先が意図的に書き換えられて間違えた投票内容がブロックチェーンに記載されることが考えられます。
投票買収が行われる
ブロックチェーンの匿名性を利用して投票買収が行われる可能性もあります。
誰が投票したのかがわからないため、マイナンバーカードのように身元を証明する方法を同時に利用しなければ投票買収が行われて意図的に投票が左右されてしまう可能性があります。
ブロックチェーンを用いた投票事例とその課題まとめ
日本の最先端都市であるつくば市、世界的に電子国家として有名なエストニア、クリプトバレーと称されるスイスではすでにブロックチェーンを活用した電子投票の実験がはじめられています。
ブロックチェーンを利用したネット投票は大変期待されているが投票を行うためのハードウェアやソフトウェアのセキュリティ面で大きな課題が残っています。
今後どのようにそれらの課題を解決していくのかとても楽しみです。
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