中国のコーヒー市場が熱い。
とくにしのぎを削っている2社があります。1つは日本でも有名、世界的コーヒーチェーン店「Starbucks(スターバックス)」。そしてもう1つが今回の記事の主役でもある中国のコーヒーチェーン「瑞幸咖啡(luckin coffee/ラッキンコーヒー)」です。
中国のコーヒー市場に彗星のごとく現れたこのラッキンコーヒー。わずか1年足らずでスターバックスを脅かす存在にまでなりました。
果たしてラッキンコーヒーとはどのような仕組みを使ってここまで急速な成長をとげてきたのでしょうか?
今回はその全貌に迫ります。
目次
ラッキンコーヒーとは?
みなさんご存知スターバックスは「将来最大規模のコーヒー市場になるのは中国である」と予想し、2021年までに中国内で5000店舗を展開する展望を立てています。それほど今の中国におけるコーヒー市場の競争は激化しているといえます。
そんな戦場ともいえるコーヒー市場に現れたラッキンコーヒー。まずはラッキンコーヒーがどのような企業なのか解説していきます。
ラッキンコーヒーを紹介する
ラッキンコーヒーは2018年1月に創業したコーヒーチェーン店です。正式にオープンしたのは5月ですが、その店舗数は1年たった2019年1月現在で2000店舗にも上ります。
まさに急成長のイケイケ企業といえます。
ラッキンコーヒーの視線の先にあるのは当然スターバックスでしょう。スターバックスのコーヒーカップのトレードマークといえば、緑色でギリシャ神話に登場するセイレーンです。
それに対抗するように、ラッキンコーヒーのトレードマークはブルーの鹿です。写真で見てもお判りいただけると思いますが、デザインも若干ですが似ている気もします。
しかし、街中でも駅を見ても中国国内では、緑のカップよりも青のカップを持つ人が増えてきているそうです。この青のカップから、ラッキンコーヒーは「小藍杯(シャオランベイ)」とも呼ばれているそうです。
中国コーヒー市場が抱えていた問題を考察する
中国のコーヒー市場はもともと盛り上がりを見せていませんでした。その要因は大きく分けて2つあります。
ラッキンコーヒーは今から紹介する2点を改善したことによって大きく飛躍していきました。まずはどのような問題点があったのかを考察していきます。
中国のコーヒーは高価格
中国でコーヒーというと高価格の飲み物であるという印象が強いそうです。たとえばスターバックスのラテは日本円でおよそ600円です。日本のスターバックスだと一番大きなサイズだとしても450円、小さなものだと330円ですので、2倍近く価格が変わってきます
打って変わって中国のペットボトル飲料は100円を切っているのが相場です。日本でも100円から150円が相場となっているので、ペットボトル飲料の安さがわかります。
これらの比較からもわかる通り、コーヒー自体の値段が中国では高値になっており、購入してくれる対象がビジネス層になっていました。
また、日本でも同様の光景が見られますが、コーヒーショップでの滞在時間が長いのも特徴です。やはり一杯の値段が高いことが要因として考えられますが、回転率の低下もあり高価格から脱出することができない状態にありました。
回転率の低下は売り上げの低下につながるのでどうしても価格の引き下げが難しくなってしまいます。
行列に並ぶ必要性がある
また、中国人全員に当てはまるのかはわかりませんが、中国人は行列に並ぶことを嫌います。やはり待つ時間が無駄だと考えられ、コーヒーショップではその時間が長い傾向にあります。
たとえば買う前に行列に並ぶ、購入後に受け渡しを待つ、受け取って後に席を探す、のように煩雑な行為が多いからです。
これらの行動を避ける傾向が大きいのと同時に、上述したようにせっかく獲得した席を簡単には手放さないという気持ちから回転率の低下も招かれると考えられます。
以上の2つが中国でコーヒーを飲むということに対して盛り上がりを見せていなかった原因であると考えられます。
ラッキンコーヒーの特徴を紹介する
ラッキンコーヒーは上記で考察した2つの問題点を改善することによって、中国のコーヒー市場にて大きな存在感を示しています。
このパラグラフではどのように改善していったのか、ラッキンコーヒーの2つの特徴を上げていきます。
アプリを活用した販売方法をとっている
ラッキンコーヒー最大の特徴といえるのがこのアプリによる「事前注文」でしょう。逆にいうといきなり店頭での注文は不可能になっています。
使い方はいたってシンプルです。アプリを開くと最も近い店舗が表示され、注文をすると出来上がり完了時間が表示されます。この事前注文を使うことにより、店舗にて並ぶという無駄な行程を省くことができるのです。
支払いは端末上にて完了するので、受け取り時には無駄な作業がありません。アプリによって表示されるQRコードを店員に提示し、それを読み取ってもらうことによって、支払いが終了します。
そしてアプリ決済から生まれたのが、テイクアウト客の増加です。この動きがとても重要で、回転数の増加につながるのです。
回転数の増加はまぎれもなく消費者にいいユーザー体験を提供することになります。
テンセントと提携している
スターバックスは、ラッキンコーヒーのことを脅威に思ったのか、アリババグループとの提携に乗り出しました。この提携の目的は、ラッキンコーヒーがデリバリー専門の店舗を抱えていることに対抗して、配達の分野をカバーしに来ていることが1つ挙げられます。
アリババ側もスターバックスのブランド力をもって、生活の中にアリババの存在を深く浸透させたい狙いがあるのだと考えられます。
そしてラッキンコーヒーはテンセントと提携を結びました。どちらかというとテンセントがアリババに対抗してコーヒー市場に参入してきたような気もします。
テンセントには、中国における圧倒的な顧客情報があり、それらを利用することによって消費者のコーヒーに対しての消費傾向等も割り出していけるのではないかと考えられます。
この提携に関してはラッキンコーヒーがというよりは、テンセントがアリババを意識して行ったものの気もします。
モノ消費からコト消費へ
ラッキンコーヒーはもちろんコーヒーを提供する企業であることはもちろん承知しています。そしてそのラッキンコーヒーを今回の記事では紹介しているので、このパラグラフのタイトルももしかしたら違和感に思われるかもしれません。
しかし間違っていません。
昨今の「モノ」消費から「コト」消費。これがラッキンコーヒーがもたらした最も大きな影響なのではないでしょうか?
ラッキンコーヒーが提供しているのはたしかにコーヒーです。安価で上質のコーヒーが得られるというのも当然そうなのですが、消費者により届いているのは以前にはなかった、時間に縛られずにモノを得られるというコトなのではなのです。
中国ではキャッシュレス決済が急速に普及してきました。中国人は面倒なことが嫌いなので、いちいち支払いをするという時間の無駄を省くために普及したのだと考えられます。
また、中国人の消費を支えている層が若手層に移ったことも要因に挙げられます。
スマホが当たり前になっている若手世代にとってスマホですべてが完結するというコトは重要なことです。ラッキンコーヒーはそこに入り込んでいきました。
それらの要素からも、今回のラッキンコーヒーの急速な成長は、中国人の中にある、コト消費への移行を指し示しているということが見えました。
シェアリングエコノミーは加速する
モノ消費からコト消費へ。これは中国だけでなく、世界中で始まっている動きです。
たとえばUber。これは車というモノを買う、車を持つということがかつては重要だったのに対して、今は車を使って移動するコトが重要になったからこそ生まれたビジネスです。
またAirbnbもそうです。かつては自分の家を持つ、持ち家というモノが重要視されていました。一種のステータスだったのです。しかし、時代は変わり、家を持つのではなく、寝る泊まる、遊ぶ、そんな場所が1か所ではなく多数の場所にあるコト、いつでも利用できる場所があるというコトが重要になっているのです。
これらのモノを持つということではなく、モノを使うというコトに重点を置き、所有ではなく共有することがメインになっている経済のことをシェアリングエコノミーといいます。
これからの時代を考えると、このシェアリングエコノミーへの動きはどんどん加速していくでしょう。
その波に乗ったのが今回紹介したラッキンコーヒーなのです。
ラッキンコーヒーがシェアしたのは、まさにその待ち時間のなさ、つまり浮いた時間です。中国人はその待ち時間があるのも嫌う。ではその時間をほかの人とシェア、自分自身とシェアすることができたら?
そのように意識をして中国人がラッキンコーヒーを利用しているのかどうかはわかりませんが、少なくとも時代がシェアリングエコノミーへと動いていることはまぎれもない事実なのです。
ラッキンコーヒーをまとめる
今回は、ラッキンコーヒーはコト消費を提供していて、それはシェアリングエコノミーの加速にもつながっている、という記事でした。
コトを消費するのは、概念的であり、実体のない状態です。目に見えないものを消費するのです。
見えないものを消費するということが可能になってきたのは、テクノロジーのおかげだと考えています。かつては概念的だったものに対しても価値を可視化することができるようになり、さまざまなものに対して価値を付けることができるようになってきたのです。
それはまさにトークンエコノミーの始まりにもなり、すべてのモノやコトに対して価値をつけることができ、それを還元することが可能になるのです。
コーヒー1つをとってみても、コーヒーに価値を置くのではなく、それをどのように提供するのかに価値を置くこともできるということがわかりました。
コーヒーという価値をどのように提供するのか、ということも変わっていくとも捉えられます。
コーヒー1つでここまで考えさせてくれるラッキンコーヒーに敬意を表しつつ、今回はこれで終わりにしようと思います。
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