師走も終盤に近付き、仮想通貨界もここから盛り上がりを見せるのではないかと思われます。
投資熱が次第に落ち着いている状態を見ても、世界的にこれからは仮想通貨の実用の時代が始まるのではないでしょうか。
仮想通貨という名前からやはり「通貨」として決済手段での使用が考えられがちです。
しかし、イーサリアムをはじめとした「プラットフォーム型仮想通貨」も忘れてはなりません。むしろ実用化の道には必要不可欠です。
イーサリアムは契約の自動更新を成し遂げてくれるスマートコントラクトや、Dappsと呼ばれるアプリケーション作成のプラットフォームとして、世界規模で利用されています。日本でもイーサリアム・ジャパンと呼ばれるコミュニティが設立されていて、多くのプロジェクトが立案されました。
仮想通貨の普及するために避けられないのが「スケーラビリティ問題」であり、イーサリアムもその問題解決に向けて尽力しています。
今回はイーサリアムに起こった2018年の出来事と合わせながら、スケーラビリティ問題解決に向けた取り組みについて紹介します。
目次
イーサリアムの現状を読み解く
2018年でも仮想通貨に関連する多様なニュースが報道されて、イーサリアムもより注目を集めるようになりました。
2018年12月時点でイーサリアム自体の価格は約1万6千円近くとなっており、昨年2017年末の約15万に比較すると大きく下落しています。
しかし、イーサリアムの価格が減少しても、イーサリアム自体に問題があった訳ではありません。
イーサリアムの技術を評価する声も多く、関連するサービスも発表されています。
まずは2018年に起きたイーサリアムのニュースの中で、代表的な出来事について振り返ってみましょう。
イーサリアムはビットコインを超える?
2018年9月、Thomas Crown Art社のテクノロジーアナリストであるIan McLeod氏は、今後5年間でイーサリアムのブロックチェーンが進歩するとともに、ビットコインを超えることを発表しました。
長期的に見れば、イーサリアムの価格は上昇すると同時にブロックチェーンが活用される機会が増えて、ビットコインのマーケットシェアを半分も奪い取ることを予想しています。
イーサリアムはDapps開発のプラットフォームとして高く評価されており、
5年以内にビットコインを超える発展を見せるとMcLeod氏は期待しています。
そのため、イーサリアムの機能が改善されれば、ビットコインを超える可能性も高まるでしょう。
アップデートし続け進化するイーサリアム
2018年12月には、イーサリアム創始者のVitalik Buterin氏がイーサリアム・スタートアップ3社に向けて、約3000万円ものイーサリアムを寄付したことをTwitterで発表しました。
Just sent 1000 eth. Yolo.https://t.co/s1q8K5Wlhs
— Vitalik Non-giver of Ether (@VitalikButerin) 2018年12月19日
次世代を担うブロックチェーンネットワークを構築するプロジェクトの促進と、
スケーラビリティ問題の解決のために寄付をしており、開発の効率化が期待されています。
イーサリアムのコミュニティでもスケーラビリティ問題の解決が大きな課題となっており、実用化のためには迅速な開発が必要とされています。
創始者自らが問題解決に向けて積極的な動きを見せているので、2019年にはイーサリアムが更なる進化を遂げることも期待できます。
スケーラビリティ問題とは何か?
仮想通貨はブロックチェーンを通じた送金によって、政府や企業など特定の団体による信用に依存しない非中央集権を実現させることが大きな目的にあります。
しかし、海外に向けた送金で手数料と時間がかからなくなりますが、利用者が増えると取引にも対応しにくくなり、最悪の場合取引自体が無効になることもあります。
利用者の増加によって仮想通貨による取引が進まないことを、スケーラビリティ問題と言います。
スケーラビリティ問題の解決にはブロックチェーンで保存するデータの容量を増やすなど、定期的なハードフォーク(仮想通貨のアップデート)が必要になります。
より詳しい解説はこちらの記事をどうぞ
イーサリアムはスケーラビリティ問題の解決のため、3つの取り組みを行っています。それぞれの取り組みと仕組みについて知っておきましょう。
プラズマとは何か?
2017年8月、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するため、Vitalik Buterin氏はJoseph Poon氏と共同開発でプラズマ(Plasma)を発表しました。
プラズマの実装によって、ブロックチェーンに保管されるデータの量が増えていき、トランザクションにかかる時間と手数料が削減されます。
余分なデータも縮小されるので、容量の大きなデータを利用したトランザクションもスムーズな進行が可能です。
プラズマの仕組みを解説する
プラズマは、イーサリアムのブロックチェーンを元にして、新たにプラズマブロックチェーンを作っていきます。
Tree(木)のように階層的な構造になっていて、複数のブロックチェーンが繋がり合っています。
この関係を親と子に例えられることも覚えましょう。
プラズマの場合、データを保管する子ブロックが新しく追加される度に、親ブロックにも情報が伝達されます。また、親ブロックから出る命令は、子ブロックにも伝わっていくことが特徴です。
そしてプラズマチェーン内で不正を働く人間が現れた場合、Fraud Proofと呼ばれるシステムで不正取引を暴きます。
送金する側が必要な金額を持っているかを確認して、きちんと支払えるかを証明します。もしも取引において不正が暴かれれば、そのブロック自体が無効になる仕組みです。一つ前のブロックが、一番最後に変わります。
こちらは実際のプラズマのホワイトペーパーです。
シャーディングとは何か?
2018年12月10日、Vitalik Buterin氏は自身のTwitterにて、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)を元にしたシャーディングを活用化させることによって、ブロックチェーンの効率化を宣言しました。
9. Blockchains of the future with proof of stake and sharding will be thousands of times more efficient, and so the efficiency sacrifices of putting things on a chain will become more and more acceptable.
— Vitalik Non-giver of Ether (@VitalikButerin) 2018年12月10日
シャーディングは取引の承認を複数のグループで行うことで、作業の効率を上げるシステムのことです。
各々のデータベースはシャードと呼ばれ、データを分散させることによって負担を軽減させています。
取引の承認作業を一つのデータベースで行うと、その対応に時間がかかってしまい、トランザクションの検証が進まなくなっていました。
しかしシャーディングを使うことによって、100の作業を5等分して1グループで20の作業で済むようになります。
イーサリアムに限らず、あらゆる仮想通貨は世界的な普及と同時にトランザクション検証の時間を効率化させることが求められているので、今後はシャーディングの需要もあがってくるでしょう。
ライデンネットワークとは何か?
Raiden Network(ライデンネットワーク)とはイーサリアムの取引をより効率化させるためのプロジェクトです。
ビットコインでいうところのライトニングネットワークに似ています。
二者間のやり取りを一度オフチェーン上で行い、最終的な結果のみをイーサリアムのチェーンに残すというものです。
また、ライデンネットワークではバランスプルーフ(balance proof)という技術が使われています。
これは、両者がまずオフチェーン上で通貨やトークンをデポジットし、そのデポジットした額の範囲内でやりとりができるというものです。
支払いや決済で広く使えるようにする為に、取引数のスケール拡大や迅速な取引処理も目指しており、更には利用者のプライバシーを守ってくれます。
加えて、手数料も安く済むので、イーサリアムの利用者も増えることにも繋がります。
ライデンネットワークは開発が進んでいる段階であり、ホワイトペーパーの公開は行われていません。しかし、ライデンネットワーク内で利用されるRDNというトークンも広まりつつあり、また法定通貨や他の仮想通貨との互換性を持たせることも目指しています。
メリットやデメリットは?
それぞれのシステム開発の状況から、イーサリアムのスケーラビリティ問題対策は確実に進んでいると言えるでしょう。
しかし、メリットだけでなくデメリットも潜んでいるので、システムごとに把握していきましょう。
プラズマのメリットやデメリット
プラズマはイーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するため、ブロックの容量拡張及びデータ量の縮小が同時に可能となります。
ブロックごとにデータが共有されて、また命令も確実に浸透します。
しかしプラズマチェーン内で取引の正当性を証明するには、全てに同期しなければならず、また大量の容量が必要です。
その解決のため、Vitalik Buterin氏は2018年3月にPlasma Cash(プラズマキャッシュ)というコイン作成を発表しました。
プラズマキャッシュを利用すれば、プラズマチェーンとの同期を行わなくても取引の追跡可能となることが期待されています。
シャーディングのメリットやデメリット
シャーディングを導入することで個々のデータベースで処理をする取引の件数が分散化されるので、ビジネスの効率化が進みます。
ただし、実用化にはPoSのアルゴリズムが必要となり、分割化された後のシャードの性能は公平であるべきです。
シャードのアルゴリズムはPoSでなければネットワークを維持できないことがデメリットです。
反面、シャーディングはスケーラビリティ問題に役立ち、それぞれのデータベースで必要な検証作業が大幅に減ります。
ライデンネットワークのメリットやデメリット
ライデンのシステム上、送金可能な金額の上限はあらかじめデポジットした額なので、100万円を超えるイーサリアムを送金したいときには、贈り側と受け取り側が100万円分のデポジットが必要になります。
複数のユーザーに大金が行き渡るようになるには、相応の金額が必要です。
迅速な取引処理が可能となっている一方、大量のお金を扱うには向かないシステムになるでしょう。
イーサリアムの今後についてまとめる
Coininfoにもイーサリアムとそれ以外のプラットフォーム型仮想通貨との比較記事がいくつもあがっています。
細かいピンポイントでの機能に特化した通貨がたくさん開発されてきて、それらの通貨の前では太刀打ちできないのは否定ができません。
しかし、イーサリアムの価格を見てもわかりますが、元祖プラットフォーム型仮想通貨としていまだに人気のある力強い通貨です。
今回紹介してきたように、イーサリアムはスケーラビリティ問題の解決のため、様々なシステムや新たなる仮想通貨の開発も進めています。
それぞれの開発が成功すればイーサリアムを利用した取引が更に進むようになっていくでしょう。
2019年以降、世界規模でイーサリアムを普及させて行くため、Vitalik Buterin氏を始めとした関係者は開発に尽力していきます。
今後もイーサリアムの動向には目が離せないでしょう。
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