2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物の論文が発表されたことをきっかけに、世界規模で1000を超える種類の仮想通貨が誕生しました。
それに伴って仮想通貨に対する規制も強まり、G20でも参加国同士で仮想通貨に関する規制で話題になっています。
本記事では、G20の参加国の一つであるアルゼンチンが、仮想通貨に対してどんな考えで向き合っていて、またどんな規制を行っているのかを解説します。
世界各国では仮想通貨に対する考えが異なっていて、国ごとで規制も変わります。仮想通貨の流通具合や取引所の数、そして国としての期待も違います。
アルゼンチンは仮想通貨の将来性に期待を抱いています。具体的にどのような動きがあるのかを解説していきます。
目次
アルゼンチンの概要を解説する
アルゼンチンは南米に位置する国であり、首都はブエノスアイレスです。
人口は約4400万人で、アンデスの山や氷河湖などの大自然が誇る国土であり、GDP(国内総生産)は2017年の世界ランキングで21位です。
アルゼンチンは広大な資源に溢れていますが、政情が不安定だったため、経済に不安が見られました。
2015年12月にはマクリ政権発足を機会に経済改革を進めていますが、アルゼンチンは未だに苦境に立たされています(参照:経済改⾰が進むアルゼンチン-三井物産戦略研究所)。
アルゼンチンは1999年よりG20の参加国となり、2018年6月末に首都ブエノスアイリスでG20のサミットが開催されました。
同年7月でも、ブエノスアイレスではG20参加国の財務大臣による中央銀行総裁会議が行われています。
アルゼンチンは通貨危機に陥っており、労働者の所得は減少しているので、現在は国の経済回復が求められています。
しかしドゥホブネ財務相はG20会談の成功を述べており、参加国間での合意の達成を容易に行えたと語っています(参照:Argentina Treasury Minister Says G-20 Consensus Easily Reached-Bloomberg)。
アルゼンチンでの仮想通貨の認知度と保有率を解説する
アルゼンチンでは通貨危機に陥っているため、特定の国家の信用に依存しない仮想通貨が注目されています。
アルゼンチンの通貨であるペソは2018年9月時点で、日本円にして3円にまで価値が下落しており、ペソ安が止まりません。
国のインフレやデフレによって通貨が価値を失った時、リスク対策として法定通貨とは関係のない仮想通貨が期待されています。
日本のように国家や法定通貨が信用されていれば、仮想通貨は急ぎで必要になる状況にはなりません。
しかし通貨危機に陥っている国家には、仮想通貨は状況を打破する手段となり得ます。
また、アルゼンチンでは仮想通貨用のATMが4000台近くも導入されており、保有率が今後も増えていくことが予想できます。
日本でも仮想通貨用のATMが増えつつありますが、現時点ではアルゼンチンが圧倒的に設置されています。
ダリア・リサーチ(Daliar Research)の調査では日本人の仮想通貨保有率は世界でトップクラスと発表されました。
その割合は11%であり、人数に換算すると1000万人が仮想通貨を保有している計算になります。
アルゼンチン | 日本 | |
---|---|---|
認知度 | 仮想通貨ATMが多く設置されている程に高い | メディアの影響で認知度が広まっている |
保有率 | 法定通貨の下落と共に保有率が上がる | 世界ではトップクラスの保有率:11% |
保有人数 | 今後は増えていく見込みがあり | 約1000万人 |
参照:How many people actually own cryptocurrency?−Medium
アルゼンチンで人気の仮想通貨とは何か
アルゼンチンではビットコインが積極的に利用されています(参照:A Bank In Argentina Is Now Using Bitcoin for Cross-Border Payments-coindesk)。
アルゼンチンの銀行は現在、国際送金にBitcoinを使用しています
アルゼンチンの銀行であるBanco Masventasは、2018年5月に顧客がビットコインを利用した海外送金を可能となったことを発表しました。
アメリカの大手仮想通貨取引所Bitexとも提携しており、今後アルゼンチン国内で更に仮想通貨が広まっていくことが予想されます。
アルゼンチンでの仮想通貨の歴史
アルゼンチンでは積極的に仮想通貨の導入を行っており、他のG20参加国と比べても規制が弱いです。
仮想通貨の規制を行わずに運用することは、それだけ技術に対する期待が向けられており、また銀行も仮想通貨決済を取り入れています。
アルゼンチンではビットコインの決済が導入されるようになり、銀行はもちろんのこと一般企業も仮想通貨に期待を見せています。
アルゼンチンで仮想通貨が人気になったきっかけと時期
2016年、カーシェアのサービスであるUberがアルゼンチンでのビットコイン決済を開始しました(参照:Uber、アルゼンチンでビットコイン決済の受付を開始-BTCN)。
これまで、アルゼンチン政府はビットコインに対して懐疑的でしたが、Uberのビットコイン決済をきっかけにアルゼンチン全体に仮想通貨の文化が広がるようになりました。
観光客にはUberのようなカーシェアのサービスが強く求められます。
海外の通貨に両替する手間を省けることも仮想通貨のメリットです。
もちろん、全ての店舗で仮想通貨決済を導入している訳ではないので、旅行の際には事前にビットコイン決済に対応する店舗を調べてからにしましょう。
アルゼンチンでの仮想通貨に関するニュースを解説する
ここまで、銀行による仮想通貨の送金導入など、アルゼンチンにおいて仮想通貨は好意的な印象を持たれているニュースを発表しました。
2018年5月にはチリの仮想通貨取引所のBuda.comがアルゼンチンでも事業展開を行うことを発表しています(参照:Chilean Cryptocurrency Exchange Launches in Argentina-Bitcoin.com)。
アルゼンチンが重要な市場になることを予測しており、ビットコイン・イーサリアム・ビットコインキャッシュの三種類の利用を発表しました。
また、今後はライトコインの追加も予定しています。
アルゼンチンで起こった主要な仮想通貨関連のニュースを年表にまとめました。
時期 | 出来事 |
---|---|
2016年 | Uberがアルゼンチンでビットコイン決済を導入した |
2017年 | アルゼンチン国内で200台を超える仮想通貨ATMが導入される |
2018年5月 | 銀行(Banco Masventas)がビットコイン送金を導入する |
2018年5月 | チリの仮想通貨取引所Buda.comがアルゼンチンに事業を展開させる |
2018年5月 | アルゼンチン国内に4000台もの仮想通貨ATMを導入することが発表される |
2018年6月 | 首都ブエノスアイレスでG20の会議が開催され、仮想通貨の議題があがる |
各機関の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
アルゼンチン国内では仮想通貨用のATMが導入されており、国内でも仮想通貨の流通が増えつつあります。
仮想通貨取引所Buda.comの他にも、2017年にはCryptohubと呼ばれる仮想通貨取引所がアルゼンチンで設立されました。
アルゼンチンでの主要な各機関が仮想通貨に対してどんな姿勢でいるのかを、それぞれ紹介していきます。
アルゼンチン政府の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
世界各国では仮想通貨に対する法規制を整えており、また仮想通貨に対する税率も高く設定しています。
しかしアルゼンチンでは仮想通貨の税率は15%に設定されていて、日本の最大55%の税率と比較すると非常に安くなっています(参照:アルゼンチン:国外居住者たる受益者が得た金融収益の税務上の取扱いに関するガイダンス-KPMG)。
仮想通貨は自己責任で取り扱うべきであり、マネーロンダリングなどの犯罪に悪用されるリスクが潜んでいます。リスクの一方でビットコインやブロックチェーンの技術を期待する声も多いです。
アルゼンチンも仮想通貨に対して大きな期待を寄せているからこそ、積極的にATMを導入する動きを見せています。
アルゼンチンの銀行の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
仮想通貨は投資の手段として考える人も多いですが、最大の特徴はインターネットを通じた送金です。
従来の銀行では法定通貨同士の両替を行うには、人件費が手数料となっていました。
しかしビットコインをはじめとする仮想通貨は間を挟む銀行を必要としないため、海外の送金に余計な手数料がかかりません。
アルゼンチンの民間銀行である『Banco Masventas』は世界で初めてビットコインの送金を採用しました(参照:A Bank In Argentina Is Now Using Bitcoin for Cross-Border Payments-coindesk)。
民間銀行でビットコインの送金を行ったのはBanco Masventasが世界で初めてであり、世界に向けた仮想通貨送金を銀行が率先して行っていることになります。仮想通貨のATMを大量に設置したことから、仮想通貨の技術に対して大きく肯定の姿勢を見せています。
ATMの設置と仮想通貨による決済が進めば、国民の生活に仮想通貨がより身近になっていくので、アルゼンチンの銀行はビットコインのイメージアップに力を入れていることが伺えます。
国外送金を積極的に行うことができれば、手数料の不安も解消されます。無料ではありませんが、従来の法定通貨同士の両替に比べれば格段に安くなります。ビットコインのような新しい決済の取り入れれば、銀行も利用しやすくなります。
アルゼンチンの企業の仮想通貨への姿勢と見解を解説する
アルゼンチンの首都ブエノスアイレスでは仮想通貨の決済を積極的に取り入れています。
政府が金銭管理を徹底していることにより、ビットコインを取り扱える環境が整っていて、企業も仮想通貨の導入が可能です(参照:The Top 10 (or 11) Bitcoin-Friendly Cities-CCN)。
ブエノスアイレスは南米で卓越した業績を挙げています。
理由の1つは、アルゼンチン政府が財務管理を厳格に行っているため、ビットコインが消費者にとって有用であることが証明されていることです。
首都で仮想通貨が盛り上がれば、そこから自然に国全体に普及していきます。
国に設置されたATMの効果も合わされば、企業も利用より仮想通貨を利用しやすくなります。今後は国全体で仮想通貨の盛り上がりが期待されます。
アルゼンチンでの仮想通貨の将来性とアルゼンチンが世界に与えるインパクトを考察する
アルゼンチンのように財政危機に陥った国が仮想通貨で立て直すことができれば、世界で大きなインパクトを与えて、仮想通貨の信用性は上がります。
既に世界各国では仮想通貨を利用した資金調達の手段であるICOが流通しており、仮想通貨の技術が確実に評価されています。
ただの投資手段ではなく、世の中を変える一つの手段というイメージを与えていきます。
アルゼンチンでの仮想通貨の将来性を考察する
アルゼンチンではビットコインだけでなく、イーサリアムやライトコインが利用されているので、仮想通貨の普及が進行中です。
今後、他のアルトコインが導入されていけば、さらに仮想通貨の信用が上がります。
国を立て直すのは時間がかかるので、道のりは長いです。
しかしアルゼンチンでは政府や銀行、更に企業が仮想通貨を取り入れているので、ビットコインをはじめとする仮想通貨で国が救われる可能性は充分にあります。
アルゼンチンでの仮想通貨の発展が与える世界へのインパクトを考察する
仮想通貨専用のATMを4000台も導入したことや、初の銀行によるビットコインの送金導入は世界に大きなインパクトを与えています。
大規模なATM設置は世界でも珍しく、仮想通貨に対して真剣に向き合っている国家であることの証明にも繋がります。
貧困に苦しむ国々では、銀行口座すら持てないアンバンクドと呼ばれる人達が大勢います。
ビットコインはアンバンクトの人達を救うための新しい手段として、スマボのみで決済できるQRコードが利用されます。
発展途上国で仮想通貨の需要が上がれば、アンバンクドの人達にも仮想通貨が広がる可能性が出てきます(参照:imgur)。
銀行口座を利用できない人にとって、仮想通貨の発展は再起のチャンスにもなり得ます。
国が仮想通貨に力を入れれば、銀行口座を持たない貧困が解決するきっかけにも繋がるのです。
仮想通貨自体のレートは不安定ですが、世界情勢によって高騰する可能性があります。今後アルゼンチンで仮想通貨の価値が大きく上がれば、世界でもビットコインが認められていきます。
アルゼンチンの仮想通貨事情をまとめてみた
アルゼンチンは国の経済が不安定であり、法定通貨のペソの価値が下がりつつあります。
一方でビットコインを始めとする仮想通貨には大きな期待を見せており、国を再生させるチャンスはまだ残されています。
仮想通貨をきっかけにアルゼンチンが立て直されれば、仮想通貨自体の技術も世界で認められるようになり、各国の規制も見直される可能性があります。
既にアルゼンチンでは銀行で送金が取り入られているので、国家としてはビットコインの評価が充分に高いです。
仮想通貨は種類によって決済の速度や性能が異なります。それぞれの仮想通貨を使い分ければ、ビジネスや政治にも役立つので、アルゼンチンにとって仮想通貨は大きな利益の元になる存在です。
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