今回は、仮想通貨のコンセンサスアルゴリズムの中でも「より民主的で公平な仕組み」の3つの方法をお伝えしていきます。
何かと「非中央集権」という言葉が注目を集める仮想通貨市場ですが、今回紹介する「POC」、「DPOS」、「DBFT」というコンセンサスアルゴリズムは、あえて中央集権的な体制を取り、決済承認スピードを高めるなど大きなメリットが存在します。
それでは、ここからは3つのコンセンサスアルゴリズムについて、それぞれの特徴や長短所、開発に至る背景など詳しく解説していきましょう。
POW,POS,POIに関してはこちらの記事を参考にしてください。
目次
POCとは
POC(プルーフ・オブ・コンセンサス)は仮想通貨時価総額3位のXRP(リップル)が採用しているコンセンサスアルゴリズムです。
ここでは、POCの特徴や仕組み、長短所、開発の背景について詳しく解説していきます。
POCの仕組みとは
- 信用力の高い人に承認権を委託するシステムで、その信用の高い人物の中の一定数以上が承認すれば送金が可能になる仕組みです。
POWやPOSでは、承認権を与えられるのは取引を行う本人となる一方で、POCの仕組みは民主的で中央集権的な特徴を持ちます。
「中央集権」か「非中央集権」かで仮想通貨の健全性が測られがちですが、POCは信頼ある団体や企業が承認権を得ることもあり、不特定多数の個人よりも安全性は高いという考え方もあります。
たとえば、POCを採用しているRippleは提携する各金融機関に承認権を与えています。
リップルネットワークの中で信頼に値する承認者のことをバリデーターと呼び、バリデーター全体の80%以上が承認を行うと送金が完了するのです。
また、POCとよく似たSCPを採用する仮想通貨にStellarがあります。
StellarのSCPは、Sliced Quorumと呼ばれ、信頼できる参加者に承認権を与える仕組みです。
Rippleのように、80%の承認を得なくても処理が行われるため、より高速取引ができるメリットがあります。
POCの強みと弱み
承認権が特定の人物だけに絞られるということは、自然に取引承認に関わる時間も縮小することが予測できます。
たとえば、企業などでも十数名の役員で決を採るよりも、1人の社長が判断を下すほうがスピーディです。
つまり、POCはPOWやPOSに比べて承認スピードの速さが強みとなります。
承認スピードは決済や送金時の反映処理時間にも影響を与えるため、「承認時間が短い=送金や決済がスムーズなる」ということです。
実際、POCを採用するXRPの決済承認時間は4秒。それに対してPOWを採用するBitcoinの場合は10分なので、いかにPOCの承認作業がスムーズかが分かります。
ただし、承認作業を行うのが団体や企業であったとしても確実に信頼できるわけではありません。
仮に数の暴力が働き承認を行う団体が不正を働いてしまった場合には、POWやPOSによって不正が行われた場合よりも被害規模が拡大してしまう危険性もあるのです。
POCが生まれた経緯
Bitcoinを始め、POWを採用する仮想通貨は承認作業に膨大な時間を要することが大きなネックポイントとなっていました。
将来の決済通貨を目標とするBitcoinですが、レジの支払いに10分も時間がかかっていては誰も通貨を使おうとは思いませんよね。
そこで取引のスピードを速めるために生まれたのがPOCという考え方です。
非中央集権が基本となる仮想通貨市場の中で、あえて中央管理者が承認作業を行うという仕組みでスムーズな取引ができるようになりました。
ただし、実際に承認を行う団体に対して、「何をもって信頼性を確保するか?」という問題点も内包しています。
- Ripple(リップル、XRP)
- Stellar(ステラ、XLM)(SCP)
DPOSとは
DPOSは「委任型プルーフ・オブ・ステイク」で、POSの発展系として誕生しました。
POSは通貨の保有量に応じて承認権を与える仕組みですが、DPOSはより民主的な内容と言えるでしょう。
EOSと呼ばれる仮想通貨などでDPOSが採用されています。
ここからは、DPOSに関する特徴や仕組みを詳しく解説していきましょう。
DPOSの仕組みとは
- Deligatedの「委任」という呼び名が示す通り、承認権を他者に委任する形で取引の整合性を高める仕組みです。
仮想通貨の保有者が承認者を決定してその権利を委任する仕組みです。
POSでは、その仮想通貨を保有する人が承認権を得る仕組みでしたが、DPOSは通貨保有者が承認者を選出する形をとります。
選出された承認者(代表)が取引承認を行い、そこで得た報酬を選出者に対して配分します。
いわば民主主義的な投票行為と捉えることもできるでしょう。
DPOSの強みと弱み
DPOSもPOCと同じように、承認を行う人を限定することで取引作業に必要な承認数を抑え、スムーズなプロセスを実現しています。
つまり、承認スピードの速さがDPOSの強みです。
一方で、承認作業を行う人たちが手を組んで不正を行うということも考えられます。
しかも、不正作業者の数が多くなるほど被害規模が大きくなるなど、POCと同じようなデメリットが潜んでいます。
DPOSが生まれた経緯
通常、POWのマイニングでは自分自身が承認作業を行うため、作業のための機材や設備なども自前で用意しなければなりません。
また、作業を行う時間や労力が発生するため、決して効率的な仕組みとは言えないでしょう。
こうした時間的、資金的リスクを軽減するためにDPOSは生まれました。
承認作業を他者に委託することでコストは大幅にカットできます。
また、承認作業者が得た報酬から配当金を得られるため、効率性に則った方法と言えるでしょう。
- EOS(イオス、EOS)
- Lisk(リスク、LSK)
DBFTとは
DBFTの正式名称は「Delegated Byzantine Fault Tolerant」と言い、DBFTを採用するNEOのホワイトペーパーでは「ビザンティン耐障害性コンセンサスメカニズム」と紹介されています。
これまで紹介しましたPOCやDPOSと同じように、DBFTも取引のスピード性、スムーズ性を重視して開発されました。
それではDBFTに関する特徴、仕組みなどを詳しく解説していきましょう。
DBFTの仕組みとは
- DPOSと同じように、仮想通貨保有者が複数の承認者を選んで作業を行っていきます。
しかし、DBFTの場合は承認者を選ぶプロセスが複数に分かれ、より信頼性の高い承認者が選ばれる仕組みが備わっています。
ブロックチェーンに参加する人は投票によって承認者を選びます。
DBFTではこの承認者をブックキーパーと呼びます。
そして、さらに選ばれたブックキーパーの中から代表者1名をランダムで設定します。
その後、その代表者は他のブックキーパーから信認投票が行われ、全体の66%の信認が得られなければ再度ブックキーパーが選出し直されるのです。
この作業は確実に66%の信認が得られない限り続けられるため、信頼性の高い承認者が代表者になる仕組みです。
DBFTの強みと弱み
実際に承認作業を行うのは選ばれた代表者1名ですが、選出を行った人に対しても報酬が支払われるため非常に民主的な取り組みと言えるでしょう。
また、同じく民主的なPOCやDPOSと比較しても、承認者の信認性が高いという強みがあります。
ただし、DBFTを採用するNEOでは、ブックキーパーのほとんどがNEOチームによって寡占されているのが現状で、本当に民主的なプロセスを辿っているのか大きな疑問です。
このように、中央集権的で、強い力によって不正利用される可能性を抱えていることがDBFTの弱みと考えられます。
DBFTが生まれた経緯
POSやPOIの仕組みでは、「一部の富を持つもの」が大きな力を得て市場をコントロールしてしまう危険性があります。
「持つ者」と「持たざる者」の格差は徐々に拡大し、健全な取引が阻害される可能性も考えられるでしょう。
DBFTの場合は承認者を選ぶプロセスが多重構造となっており、より民主的、公平公正な仕組みと言えます。
ただし、NEOの事例に見るように完全な公平市場を達成するのは簡単なことではありません。
POCやDPOS、DBFTなど民主的プロセスを辿るコンセンサスアルゴリズムでは、どうしても承認者による寡占化が問題となってきます。
- NEO(ネオ、NEO)
- Ontology(オントロジー、ONT)
三つのコンセンサスアルゴリズムを表でまとめてみた
ここまでPOC、DPOS、DBFTという3つのコンセンサスアルゴリズムを紹介してきました。
この項目ではそれぞれのアルゴリズムの特徴をまとめています。最後に概要を確認して、それぞれの特徴をしっかりと理解しておきましょう。
名前 | 内容 | 強み | 弱み |
---|---|---|---|
POC | 承認権を特定人物や団体に委託する方法 | 承認プロセスが簡素化され、送金や決済がスムーズになる | 委任された承認者に対しての信認性の不透明さ |
DPOS | 代表者を選出し、承認作業を行って得た報酬を配分する仕組み | マイニングのための時間的、金銭的リスクの軽減 | 代表者同士の団結による大規模な不正行為の危険性 |
DBFT | 複数の投票プロセスで信頼性の高い承認者を選ぶ仕組み | POCやDPOSなど他の民主的アルゴリズムと比較して信認性が高い | 通貨発行者の市場寡占化の危険性 |
POC、DPOS、DBFTコンセンサスアルゴリズムまとめ
今回は、民主的なコンセンサスアルゴリズムとして「POC」、「DPOS」、「DBFT」という3つの仕組みを紹介しました。
上記3つのコンセンサスアルゴリズムは内容がよく似ていますが、代表者を決定するプロセスに若干の違いがあります。
よりプロセスが複雑なDBFTほど代表者に対する信認性が高まるものの、代表者による市場寡占化や不正行為の危険性も高まると言えるでしょう。
コンセンサスアルゴリズムとして基本的な「POW」、「POS」、「POI」など全ての仕組みで万能なものはなく、それぞれ長所と短所が含まれています。
そのため、仮想通貨の銘柄を決める際は、今回紹介したコンセンサスアルゴリズムも参考にしてみましょう。
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