みなさんはビットコインキャッシュの誕生の秘話をご存知でしょうか。
「ビットコイン(BTC)とビットコインキャッシュ(BCH)って名前が似ているよね」と感じる方は多いと思いますが、その誕生の背景を知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ネット上ではよく、「ビットコインキャッシュはビットコインより性能が優れているから安全、ビットコインは危険」などの曖昧な情報を見ますが、こうした情報に流されてしまうと投資判断に狂いが生じる可能性があります。
そこで、ビットコインとビットコインキャッシュ、その関係性や背景についてしっかりと理解し、冷静な判断に役立てましょう!
目次
ビットコイン分裂騒動についての背景
ビットコインキャッシュとビットコインの名称がなぜ似ているのか?
それは、ビットコインから分裂してビットコインキャッシュが生まれたからです。
「え、仮想通貨って分裂するの?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
仮想通貨は完全にデジタルデータなので、ここで言う分裂とは通貨の取引を記録するブロックチェーンが2つに分岐した、ということです。
簡単に言えば、データを保管していた倉庫が本社と支社に分かれたようなもので、取引データは全く異なることから、ビットコインとビットコインキャッシュは全くの別通貨となります。
では、なぜこのような分裂が起きたのでしょうか?
仮想通貨取引情報のブロックへの記載が大きく関わってきます。
以下より詳しい説明を行います。
コイン取引情報の記載ってどうするの?
仮想通貨を送金(売買)する際は、ブロックチェーン上に存在する「ブロック」に取引データを保存します。
ブロックチェーンが倉庫だとしたら、ブロックは倉庫内の保管スペースで、保管スペースの中には複数の荷物(取引データ)が置かれています。
ビットコインのブロックは1つにつき最大1MBまでの取引データを格納できます。
たとえば、「AさんがBさんに1BTC送った」というのが1つのデータ。この送金データは容量が小さいので、1つのブロックに約2,000件ほどの取引データを収納できます。
ただし、それぞれの送金を行う度に、「Aさんという情報は正しいのか」、「不正はなかったのか」など情報を精査しなければなりません。その解はコンピュータの膨大な計算処理によって導かれます。これを「マイニング」といいます。
この「マイニング」と「報酬制度」がうまくバランスを保つことでビットコインの安全性は確保されています。
結果、一番速く解を出したマイナーには報酬として新規発行分のBTCが渡されます。
ビットコイン分裂騒動が起きた原因
ビットコインが分裂するに至った背景には3つの大きな流れがありました。
- スケーラビリティ問題
- スケーラビリティ問題の解決策の提案
- コミュニティ内で意見の対立が起き通貨分裂
取引量が最高潮に達した2017年12月には最大25万件の遅延がスケーラビリティ問題により発生してしまいました。
ビットコインの1つのブロックには約4,000件しかデータが入らないというシステム的なデメリットがあったからです。
この問題を解決する手段として、ビットコインのコミュニティでは2つの解決策が提案されます。
- 取引データ自体を圧縮して容量を小さくする(Segwit案)
- ブロックサイズ自体を大きくする(ビットコインキャッシュ案)
1つ1つの送金データを軽くする1番目の案は、データ圧縮をかけることで処理スピードそのものが速くなるため、最初は好意的に受け止められました。
しかし、一部のメンバー(中国人マイナー)がこれに反発しました。
- Segwit実装を推すビットコイン開発者派閥
- ビットコインキャッシュの誕生を推す中国のマイナー派閥
メンバーで主導的な位置を占めるマイニング企業Bitmain社は、従来のマイニング機器よりも消費電力を30%削減し、計算効率を30%上昇させる専用機(ASICBoost)を開発していました。
このASICBoostは2番目のビットコインキャッシュ案にはシステム互換性がとれ対応も可能ですが、1番目のSegwit案には対応できない機器となっています。
そこでビットコインキャッシュ案を強引に進めることで、自分たちのマイニング収益を確保しようとしたのです。
その時期は中国のマイニングファーム(巨大採掘業者)は既に圧倒的シェアを獲得しており、中国人投資家の発言権も強まっていた時期でした。
それだけに、コミュニティ内で1番目の案を支持する側と2番目の案を支持する2つの派閥に分かれてしまいました。
なかなか結論の出ないなか、とうとうしびれを切らした中国マイナー側(ビットコインキャッシュ案を支持する側)は独自にブロックチェーンを分裂させてしまいます。
これが、ビットコインのハードフォークと呼ばれるもので、新しくビットコインキャッシュが生まれたのです。
その処理能力は10分間で約7,000~30,000件まで高まり、ビットコインの脆弱性を見事に解決した通貨とまで評価されました。
分裂後に生じた変化
ビットコインが分裂し、新たにビットコインキャッシュが生まれたことで、仮想通貨市場にはどのような変化が生まれたのでしょうか?
その変化とは主に以下の2つです。
- ビットコインよりも実用性の高い仮想通貨に
- ビットコインだけでなくアルトコインにまで価格変化が生まれる
ビットコインキャッシュの実用性
ビットコインキャッシュは、ビットコインの不完全性、脆弱性を解決するために生まれた仮想通貨です。
そのため、ビットコインに比べると実用性や利便性の面で大幅に「改善」が見られました。
たとえば、ブロックサイズが1MBから最大8MBまで大きくなったことで、今までの8倍の取引件数を処理できるようになったのです。
2017年12月、ビットコインに大量の送金需要(多くは投機目的)が集中したことで、約20万件もの送金詰まりが発生。単純に1人が1回の送金を行っていたとして、最大20万人のユーザーが、「一体いつになったら送金されるんだ」という事態に遭遇してしまったのです。
これでは送金どころか、ビットコインが将来的に目指す決済通貨は到底実現できません。商品を買ったのに、決済処理がいつまでたっても行われない通貨は誰も使いたいと思いませんよね。
しかし、ビットコインキャッシュの場合は、こうした送金遅延問題の大部分が解決できます。
ビットコインと同じように、ビットコインキャッシュの最終ゴールは決済通貨なので、今後はBTC決済対応の店舗もビットコインキャッシュを採用する動きも広がるかもしれません。
また、取引承認時間は10分のまま変わらず、なおかつビットコインよりも時価総額が低いことからマイニング用通貨としても注目され始めています。
分裂後の仮想通貨の変動について
ビットコイン分裂騒動によって影響を受けたのは、当のBTCだけではありませんでした。
ハードフォークのあった2017年8月にはBTCの調子が振るわないなか、アルトコイン各銘柄が軒並み好調な値動きを見せたのです。イーサリアム(ETH)の他、リップル(XRP)やダッシュ(DASH)といった人気銘柄の価格が上昇しています。
この理由は、通貨の分裂が発表されたことで、多くの投資家に「ビットコインは危険なんじゃないか」と危惧されたことが大きいです。
ビットコインに嫌気がさすと、BTCの通貨価値は下落し、反対にアルトコインが逃避先となって需要が高まりました。
結局は、その後もビットコイン、ビットコインキャッシュともに何事もなく取引が行われていたこともあり、通貨価値が暴落することもなく2017年末の最高値に向かって急上昇していきます。
また、この機に乗じて仕手をしかける投資家もいるので、慎重に判断する必要がありそうです。
ビットコインとビットコインキャッシュ分裂騒動まとめ
ビットコインから新しくビットコインキャッシュが生まれたことで、一部の投資家を中心として、「これからはビットコインキャッシュの時代になる」とまで噂されました。
確かに、ビットコインの最大のネックポイントだった「送金遅延問題」を解消するシステムが生まれたことで、「技術が価値を追い抜いていく」と考えても全く不思議なことではありません。
しかし、ビットコインの分裂騒動から丸々1年たった2018年8月1日。現在のBTCの時価総額は約14兆円と常にトップの位置をキープし続けています。
一方、ビットコインキャッシュは時価総額1兆4,000億円とビットコインの10分の1の価値しかありません(ランク4位なので全体からすると大手通貨ですが)。ビットコインも、ビットコインキャッシュもブロックチェーンは正常に稼働していますので、時価総額を見る上でも特別大きな影響はなかったのではないか、ということです。
ただし、ビットコインキャッシュの順位が思ったように伸びないのは、ビットコインに比べて認知度が低いことが挙げられ、今後注目する人が増えるとBTCを脅かす存在になるかもしれません。
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