仮想通貨の大きなメリットの一つとしてあげられているものとして、送金コストの安さ・速さがあります。
そのメリットを実現する技術にはブロックチェーン技術などが言われていますが、ここではその取り組みの一つとして進められているブリッジ送金を見ていきます。
このブリッジ送金をする際にメインで使われる通貨がブリッジ通貨と呼ばれているものであり、この「ブリッジ」とは(それぞれの通貨を)橋渡しするという意味が込められています。
本稿では、このブリッジ通貨とは何なのか、どういうメリットが期待できるのか、などを中心に見ていきたいと思います。
目次
従来の国際送金とは
現在のところ、私たちが海外の銀行に送金する場合には、自分の取引銀行に行き、送金先の法定通貨に交換したうえで、送金を行います。
その際には、日本円から外国通貨に交換することによる為替変動の影響を受けるほか、為替手数料が加算されます。
また、海外送金は、「SWIFT」と呼ばれる共通のフォーマットに基づいて手続きがなされますが、手続きに要する日数は最短で1〜3営業日要することが一般的です。
このように、現在の海外送金は、コストや手続きに要する時間の面で改善の余地があると考えられています。
日本の太郎君がアメリカのマイケル君に送金する場合
送金自体にも、日本の銀行や海外の銀行(コルレス銀行と呼びます)を中継することになります。
送金のプロセスとしては
- 太郎君からA銀行(日本の私銀行)
- A銀行(日本の私銀行)から日本銀行
- 日本銀行からB銀行(海外の私銀行)
- B銀行(海外の私銀行)からマイケル君
というような手順を踏むことになります。
この場合銀行に支払う手数料が加算され、海外に送金するという手続きには大きなコストが発生します。
手数料としては3000円から4000円程度必要となります。
- 海外送金を行うために多くの日数を要する
- 海外送金の手数料が高い
ブリッジ通貨の役割とは
- 世界に存在する多くの通貨を橋渡しする通貨のこと。
ブリッジ通貨でペアを作ることで、法定通貨同士のペアを減らすことが可能です。
我々が日常的に目にする法定通貨には、日本円や米ドル、ユーロなどがありますが、そのほかにも世界中には多くの法定通貨が存在します。
ブリッジ通貨とはそれらの通貨の橋渡しとなる通貨のことです。
ブリッジ通貨が存在しなければ、交換を受ける銀行は全ての通貨のペアを準備する必要があります。
日本円と米ドルのような組み合わせから日本円とブラジルレアルのようなマイナーな組み合わせまで必要となります。
交換を受ける銀行はその通貨を調達しようとしますが、調達する際にも流動性が小さいことにより、大きなコストが必要になってしまいます。
もし世界に50通貨が存在するとして、ブリッジ通貨が存在せず全ての通貨のペアが存在するとその組み合わせは1,225通りにもなるのです。
ブリッジ通貨が存在するメリット
- マイナー通貨との取引が簡単に
- ペアの削減による流動性の向上とコストの削減
ブリッジ通貨に期待されている最も大きな役割は、海外送金をする場合に必要となる通貨を極力減らすことにあります。
ある法定通貨から別の法定通貨に換金したい場合に、メジャーな通貨でなければ、色々と通貨ペアを組み合わせながら送金することになり、その分コストが多く発生してしまいます。
ブリッジ通貨を利用することで、全てはブリッジ通貨と交換できれば良くなり、送金手段が大きく改善されるのです。
また、考慮しなければならない沢山の通貨ペアを削減することによって、世界の潜在的な為替取引量を一定と仮定すると、通貨ペアの減少はそれぞれの通貨の流動性向上をもたらし、その分コストを引き下げることが可能になると考えられます。
いつでも取引できる安定した市場ができることで、不必要な価格変動も緩和されることが期待できます。
ブリッジ通貨としての役割を果たす通貨
ブリッジ通貨には、今まで説明してきたような特徴がありますが、現在のところ、ブリッジ通貨としての役割を果たすべく誕生した仮想通貨には、リップル(XRP)とステラー(XLM)の二つが存在します。
ここでは、それぞれの通貨の概要をまとめてみます。
XRPってどんな通貨?
リップルは様々なメディアなどでも取り上げられ、ビットコインには及ばないものの、時価総額や取引量も上位に位置する仮想通貨です。
Ripple Inc.がブリッジ通貨として開発を進めているものであり、既に大手の金融機関とも提携関係を構築しています。有数の知名度を誇り、将来的に有望なプロジェクトです。
2004年にカナダ人のRyan Fugger氏によって開発されましたが、驚くべきはその決済に要する時間の短さです。
独自のソフトウェア(xRapid)を用いて、ほんの数秒で国際送金の手続きが完了してしまいます。
また、取引に当たって、途中に銀行などを介さないことから、余分なコストを払うことなく、国際送金をすることが可能になります。
今後の動向が注目される仮想通貨の一つです。
Stellarってどんな通貨?
もう一つ、リップルと同じ思想を持つ仮想通貨としてステラーがあります。
2014年にリリースされ多通貨です。
リップルと決済プロトコルなど基盤は基本的に同じですが、リップルとの大きな違いはターゲットとする利用者層にあります。
リップルは主に法人利用を想定した開発が行われていますが、ステラーは主に個人利用を想定しています。
大口の資金移動が中心となる法人ではなく、小口の決済や送金を主な利用シーンとして考えているのです。
ステラーはこのような個人利用を想定し、IBMやTEMPO(フランス企業)などと提携し、個人の買い物代金の決済、公共料金の支払いなどの場面での利用拡大を図っています。
また、リップルと比較した場合の特徴の一つに、価格の安定に対する取り組みがあります。
リップルは発行上限が1,000億XRPと決められていますが、総量を増やすことで、価格の安定を図っているのです。
ブリッジ通貨のまとめ
いかがだったでしょうか。
本稿ではブリッジ通貨についてご紹介しましたが、海外送金や決済などにフォーカスした仮想通貨として、これらのブリッジ通貨には新たなイノベーションを起こす可能性があります。
金融に求められる基本的な機能を前進させる可能性を秘めるブリッジ通貨に対して、これからも大いに注目していきましょう!
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