2017年8月1日にビットコインは、ビットコインとビットコインキャッシュに分裂する騒動がありました。
この騒動を巡り、色々な憶測記事が流れました。
その記事を読んだ方には、スケーラビリティ問題の解決のために新しい仮想通貨が発行されたという記憶があるのではないでしょうか。
本記事では、そもそも「スケーラビリティ問題」とは何かということを確認したうえで、どうしてこの問題を解決する必要があるのか、どのようにこの問題を解決出来るのかを解説していきます。
通貨価格にも影響を与えるスケーラビリティを理解することで、仮想通貨をより深く捉えることができるようになります。
ビットコインとビットコインキャッシュの分裂騒動の詳しい真相は、こちらの記事をご覧ください。
目次
仮想通貨用語「スケーラビリティ問題」とは何か
スケーラビリティ問題とは、簡潔に言うと、ブロックチェーンの中に保存されているブロックサイズに上限があることで引き起こされる問題です。
スケーラビリティ問題は、2017年に大きくメディアに取り上げられ、ビットコインの取引量が増加するにつれ、さらに活発に議論されている話題です。
もともと開発者の間では議論されていた問題でしたが、2015年にビットコインのブロックサイズを拡張したBitcoin XTがリリースされたことで、スケーラビリティ問題が表面化しました。
その後、2017年には、ビットコインのブロックサイズを拡張するグループと、ブロックサイズを変えずにブロックあたりに格納する取引のサイズを小さくすることを主張するグループの対立がニュースになりました。
スケーラビリティ問題はどう生じるか
それでは、スケーラビリティ問題が生じる仕組みを見ていきましょう。
■ブロックチェーンの仕組みとは何か
まずはブロックチェーンの仕組みから解説していきます。
ブロックチェーンとは、AさんからBさんにいくら送金した、などの記録を保存する電子的な取引台帳のことです。
すべての人が見ることができる公開された台帳で、ブロックチェーンは分散型台帳とも呼ばれています。
ブロックチェーンは、ビットコインをはじめとする様々な仮想通貨を支える基盤技術の一つです。
■ブロックサイズと取引数の仕組みとは何か
ブロックチェーンの「ブロック」と呼ばれる、取引が格納されているスペースには、順次取引が書き込まれていきます。
ビットコインの場合、約10分ごとに新しいブロックが作成されていくようにプログラムされています。
このときに、格納できる取引のデータ量は1MB(1メガバイト)と決められています。
つまり、1つのブロックに格納できるデータ数には限りがあるため、取引数が増加していくと、ブロックに格納できない取引が溢れ、取引の遅延が発生してしまうことになるのです。
この取引の遅延が発生する一連の流れをスケーラビリティ問題と呼んでいます。
こちらの記事ではスケーラビリティ問題の基礎となるトランザクションについて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
スケーラビリティ問題が生じる一連の流れをまとめてみた
ビットコインにまつわるスケーラビリティ問題がどうして発生するのかを整理します。
ビットコインのブロックチェーンは、一つのブロックにつき登録できる取引量はおよそ4,000件と言われています。
これをマイニングと呼ばれる承認作業に要する時間が約10分程度かかるので、これがビットコインのブロックチェーンの処理能力ということになります。
問題の根源はこのブロックに入る取引量の拡大にあり、ここ2、3年でビットコインの取引量が何倍にもなり、処理能力が限界を迎えていることにあります。
処理しなければならない取引量が拡大し、現状のビットコインの処理能力を超えるとどのような事態になるでしょうか。
それは、送金や決済にかかる時間が長期化することを意味します。
速やかに、かつ低コストで送金できるビットコインの法定通貨に対する優位性が揺らいでしまうことを意味するのです。
ビットコインが10分間あたり4,0000件だと、わざわざビットコインでなくても、クレジットカードでいいじゃない…ということになってしまいかねないのです。
スケーラビリティ問題をどう解決するか
スケーラビリティ問題の解決に向けて、以下のような方法が開発者などの間で議論され、導入済みか検討されています。
ブロックサイズを拡大する
スケーラビリティ問題は、ビットコインのブロックチェーンのブロックサイズが1MBに設定されていることが問題です。
ですので、最もシンプルな解決策は、ブロックサイズを大きくすればよいという結論になります。
ブロックサイズが大きくなれば、格納できる取引量が増加し、処理待ちで送金時間が長期化するというような事態も発生しないことになります。
しかし、現状のビットコインではこのブロックサイズの拡大は行われていません。
Segwitを実装する
Segwitというのは、Segregated Witnessの略語であり、ビットコインの取引データに内在する署名データを分離することを意味します。
送金や決済に関わるデータには、誰がその取引を行ったかということが分かるように署名が格納されていたのですが、これを分離することで少しでも取引データが削減できると考えられました。
ライトニング・ネットワークを実装する
ライトニング・ネットワークとは、ブロックチェーンに書き込まれていた取引の途中経過を、ブロックチェーンの外で処理し(オフチェーンと言います)、最終的な結果だけをブロックチェーンに書き込むことによって、全体の取引量を抑制しようとする技術です。
まだ、テスト段階にあるため、実装されているわけではありませんが、今後に期待が持てる技術の一つとなっています。
ソフトフォーク・ハードフォークをする
スケーラビリティ問題では、解決策の一つとしてよく「ソフトフォーク」「ハードフォーク」という言葉が登場します。
ソフトフォークとは、現在の仕様を基盤に、その仕様を変更することで性能を高めようとするものです。
メリットとしては今までのブロックチェーンがそのまま使用できるため、仕様の変更による影響が小規模なものに抑えられることがあります。一方で、大きな仕様変更はできないため、改善効果もおのずと限定的なものに止まってしまいます。
ハードフォークとは、仕様そのものを大きく変えてしまうことによって、新しいブロックチェーンを誕生させようとするものです。
メリットとしては、ブロックチェーンに格納できる容量を大きく増加させるような大規模な手当ができることにあります。一方で、従来のブロックチェーンは使えなくなってしまうため、新しい仮想通貨が誕生するインパクトがあります。
ハードフォークの詳しい解説記事は、こちらをご覧ください。
スケーラビリティ問題への対応をめぐって、ハードフォークという形で誕生したのが、ビットコインキャッシュなのです。
ビットコインからビットコインキャッシュが分裂した騒動の詳しい解説記事は、こちらをご覧ください。
スケーラビリティ問題と通貨の価格はどう関係するのか
スケーラビリティ問題の解決によって、通貨の機能は向上し、より実用的になります。
実際にビットコインからハードフォークして誕生したビットコインキャッシュは、ビットコインの8倍もの取引量を扱えます。
その一方でビットコインの価格はビットコインキャッシュより、10倍以上も高いです。
この矛盾の理由としては、いまだにビットコインの知名度が高く、多くの人が投機対象としてまずはビットコインを保有することが考えられます。
落合陽一氏は「ビットコインの高騰に対して、ビットコインキャッシュは安すぎる」とコメントしており、本質的な機能のみで通貨が評価されていないことがわかります。
落合陽一氏
「ビットコインの高騰に対して、ビットコインキャッシュは安すぎる」
将来的には、本質的な機能に注目する人が増えていくと、ビットコインとビットコインキャッシュの価格が逆転することが起こりえるでしょう。
スケーラビリティ問題のまとめ
ビットコインに対する注目が高まると、スケーラビリティ問題など、その技術基盤を見直す必要に迫られる課題が浮き彫りになります。
新しい技術には克服すべき課題が次々と出てくるものです。
課題を克服した通貨は、より実用的な通貨へと近づいていきます。
ですので、スケーラビリティ問題のような課題を克服して誕生した通貨には要注目です。
こちらの記事ではスケーラビリティ問題の基礎となるトランザクションについて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
スケーラビリティ問題にも、その解決に向けて色々なアイデアが出されており、どのような決着を見るかに引き続き注目が集まります。
コメントを残す